検察官による上訴申立と憲法三九条、三七条一項
憲法39条,憲法37条1項
判旨
検察官による量刑不当を理由とした控訴申立てに基づき、控訴審が第一審判決を破棄して被告人に不利益な刑を言い渡すことは、憲法39条(二重処罰の禁止)および憲法37条1項(公平な裁判所の裁判を受ける権利)に違反しない。
問題の所在(論点)
検察官が量刑不当を理由に控訴し、控訴審が第一審の刑を増軽して被告人に不利益な判決を言い渡すことは、憲法39条の二重処罰の禁止や憲法37条1項の公平な裁判を受ける権利に違反するか。
規範
刑事訴訟における上訴制度は、一つの継続した手続の過程である。したがって、検察官の控訴に基づき上級審が下級審の判決を破棄し、より重い量刑を科したとしても、それは同一の事件について重ねて刑事上の責任を問うものではなく、一事不再理や二重処罰の禁止(憲法39条)には抵触しない。また、法の定める適正な手続に従う限り、被告人の防御権や公平な裁判を受ける権利(憲法37条1項)を侵害するものでもない。
重要事実
被告人に対し第一審判決が言い渡されたが、検察官がその量刑が軽すぎるとして控訴を申し立てた。原審(控訴審)は検察官の主張を認め、第一審判決を破棄した上で、第一審よりも重い刑を言い渡した。これに対し弁護人は、検察官の控訴によって第一審より重い刑を科すことは憲法39条(二重処罰の禁止等)および憲法37条1項(公平な裁判を受ける権利)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、先行する大法廷判決(昭25.9.27、昭47.12.20)の趣旨を引用し、一連の公判手続は継続したものと解した。本件において、検察官が適法に量刑不当を主張して控訴し、原審がその内容を審理した結果として刑を加重することは、被告人を二重の危険にさらすものではなく、適正な手続の一環といえる。したがって、憲法が禁ずる二重処罰や公平な裁判の侵害には当たらないと評価される。
結論
検察官の控訴により控訴審が第一審より重い刑を言い渡すことは、憲法39条、37条1項に違反しない。
実務上の射程
刑事訴訟法402条が規定する不利益変更禁止の原則は、被告人が控訴(または被告人のためのみに控訴)した場合にのみ適用される。本判決は、検察官が控訴した場合にはこの原則が適用されず、憲法上の問題も生じないことを再確認するものである。答案上は、検察官の上訴権の性質や、二重の危険の理論(継続した単一の危険)を説明する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和55(あ)937 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官が量刑不当を理由に控訴し、控訴審が第一審判決を破棄して被告人に不利益な刑を言い渡しても、憲法39条の二重処罰禁止の規定には違反しない。 第1 事案の概要:第一審判決に対し、検察官が量刑不当のみを理由として控訴を申し立てた。控訴審は検察官の主張を理由があると認め、第一審判決を破棄した上で、第一…
事件番号: 昭和47(あ)2639 / 裁判年月日: 昭和48年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官控訴に基づき、量刑不当を理由に第一審判決を破棄して自判することは、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものではないため、憲法39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し第一審判決が言い渡された後、検察官が量刑不当を理由に控訴を申し立てた。原審(控訴審)は、この検察官控訴を理由が…
事件番号: 昭和48(あ)2707 / 裁判年月日: 昭和49年2月21日 / 結論: 棄却
検察官が控訴を申し立てて第一審判決の刑より重い刑の判決を求め、控訴裁判所が右申立を理由ありと認めて第一審判決を破棄しこれより重い刑を言い渡すことが憲法三九条に違反するものでないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の趣旨とするところである。