検察官が控訴を申し立てて第一審判決の刑より重い刑の判決を求め、控訴裁判所が右申立を理由ありと認めて第一審判決を破棄しこれより重い刑を言い渡すことが憲法三九条に違反するものでないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の趣旨とするところである。
検察官の量刑不当の控訴趣意を理由ありと認めて第一審判決を破棄しこれより重い刑を言い渡すことと憲法三九条
憲法39条,刑訴法351条,刑訴法397条,刑訴法400条但書
判旨
検察官による控訴によって第一審判決の刑よりも重い刑を言い渡すことは、憲法39条の二重処罰禁止の規定に違反しない。
問題の所在(論点)
検察官による控訴に基づき、控訴裁判所が第一審判決よりも重い刑を言い渡すことが、憲法39条の二重処罰の禁止(二重の危険の禁止)に抵触しないか。
規範
検察官が第一審判決の量刑を不服として控訴を申し立て、控訴裁判所がその申立てを理由があると認めて第一審判決を破棄し、これより重い刑を言い渡すことは、刑事手続の同一の過程における継続的な審理の結果であり、憲法39条が禁止する「二重の危険」を課すものには当たらない。
重要事実
被告人に対し第一審判決が言い渡されたが、検察官がより重い刑を求めて控訴を申し立てた。控訴裁判所(第二審)は検察官の主張を認め、第一審の判決を破棄した上で、第一審よりも重い刑を言い渡した。これに対し弁護人は、検察官の控訴によって第一審より重い刑が科されることは、憲法39条に違反するとして上告した。
あてはめ
最高裁判所は、昭和25年9月27日の大法廷判決の趣旨を引用し、刑事裁判における控訴審の制度的性格を重視した。検察官による上訴は、確定した刑罰に対して再度審理を行うものではなく、未だ確定していない一つの事件について審理を継続する手続(継続審理)に他ならない。したがって、第一審の刑より重い刑が言い渡されることがあっても、それは同一の公訴事実に対する一連の刑事手続の範囲内であり、二重の危険を課したとはいえない。
結論
検察官の控訴により第一審よりも重い刑を言い渡すことは、憲法39条に違反しない。したがって、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法における不利益変更禁止の原則(402条)は「被告人が控訴した場合」に限定される。本判決は、検察官控訴の場合には当該制限が及ばず、重い刑への変更が可能であることを憲法上の観点から肯定したものである。答案上は、二重の危険(憲法39条)の解釈として「一連の手続の継続」という論理を用いる際に参照する。
事件番号: 昭和53(あ)2334 / 裁判年月日: 昭和54年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官が第一審判決の量刑を不服として控訴を申し立て、第一審より重い刑を求めることは、憲法39条が禁止する二重の危険には抵触せず、合憲である。 第1 事案の概要:第一審判決に対し、検察官が量刑不当を理由として控訴を申し立てた。被告人側は、検察官が控訴により第一審よりも重い刑を求めることは、被告人に新…
事件番号: 昭和47(あ)2639 / 裁判年月日: 昭和48年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官控訴に基づき、量刑不当を理由に第一審判決を破棄して自判することは、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものではないため、憲法39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し第一審判決が言い渡された後、検察官が量刑不当を理由に控訴を申し立てた。原審(控訴審)は、この検察官控訴を理由が…
事件番号: 昭和41(あ)2665 / 裁判年月日: 昭和42年5月4日 / 結論: 棄却
控訴審が第一審判決の刑を重く変更した場合に、これに対し更に権利として不服申立をする途がないからといつて何ら憲法の規定に違反しないことは、昭和二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)および昭和二三年三月一〇日大法廷判決(刑集二巻三号一七五頁)の趣旨に徴し明らかである。
事件番号: 昭和47(あ)1672 / 裁判年月日: 昭和47年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】下級審の有罪判決に対し、検察官がより重い刑を求めて上訴することは、憲法39条後段の二重処罰の禁止に違反しない。 第1 事案の概要:下級審において被告人に有罪判決が言い渡されたが、検察官はこの量刑を不服とし、より重い刑を求めて上訴を提起した。これに対し弁護人は、検察官による不利益な上訴は被告人を重ね…