控訴審が第一審判決の刑を重く変更した場合に、これに対し更に権利として不服申立をする途がないからといつて何ら憲法の規定に違反しないことは、昭和二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)および昭和二三年三月一〇日大法廷判決(刑集二巻三号一七五頁)の趣旨に徴し明らかである。
第一審判決の刑を重く変更した控訴審判決に対する上告理由制限の合憲性
憲法31条,刑訴法405条
判旨
検察官の控訴により控訴審が第一審の刑をより重く変更することは、憲法39条が禁止する二重の危険には抵触しない。
問題の所在(論点)
検察官の控訴により控訴審が第一審の判決よりも重い刑を科すことが、憲法39条の二重の危険の禁止に抵触するか。また、その場合に更なる不服申立ての途がないことが憲法に違反するか。
規範
検察官による控訴の申立てに基づき、控訴審が第一審判決の刑を被告人に不利益に変更(増軽)することは、憲法39条の「二重の危険」に反せず、またこれに対する更なる上訴の権利が制限されているとしても憲法違反とはならない。
重要事実
被告人が第一審判決を受けた後、検察官が控訴を申し立てた。控訴審において、第一審判決の量刑が不当として破棄され、第一審よりも重い刑が言い渡された。これに対し、被告人側は、控訴審による刑の加重は憲法39条(二重の危険)に違反するとして上告した。
事件番号: 昭和47(あ)1672 / 裁判年月日: 昭和47年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】下級審の有罪判決に対し、検察官がより重い刑を求めて上訴することは、憲法39条後段の二重処罰の禁止に違反しない。 第1 事案の概要:下級審において被告人に有罪判決が言い渡されたが、検察官はこの量刑を不服とし、より重い刑を求めて上訴を提起した。これに対し弁護人は、検察官による不利益な上訴は被告人を重ね…
あてはめ
最高裁は過去の大法廷判決(昭和25年9月27日等)を引用し、一連の継続的な刑事手続の枠内における上訴審の判断は、憲法39条が禁ずる「同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われる」ことには当たらないと解した。また、控訴審が刑を重くした場合に、それ自体を理由とした更なる事実審査の不服申立てが認められていなくとも、手続保障の観点から憲法に違反するものではないとした。
結論
検察官の控訴により控訴審が刑を重く変更することは憲法39条に違反せず、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法402条(不利益変更禁止の原則)が、被告人のみが控訴した場合に限定されていることの憲法的正当性を裏付ける判例である。答案上では、二重の危険の概念が「手続の継続」を包含するものであることを論じる際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和48(あ)2707 / 裁判年月日: 昭和49年2月21日 / 結論: 棄却
検察官が控訴を申し立てて第一審判決の刑より重い刑の判決を求め、控訴裁判所が右申立を理由ありと認めて第一審判決を破棄しこれより重い刑を言い渡すことが憲法三九条に違反するものでないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の趣旨とするところである。
事件番号: 昭和55(あ)2181 / 裁判年月日: 昭和56年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一の犯罪について二重に処罰するものでない限り、量刑上の不利益が生じても憲法39条の二重処罰禁止の規定には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、量刑の不当性や憲法14条・39条違反を主張した事案。弁護人は、本件の処罰が二重処罰にあたると主張して上告したが、具体的な事案の詳細は本決…