確定裁判を経た罪の余罪を処罰することが憲法三九条後段に違反するとの主張が欠前提とされた事例
憲法39条後
判旨
同一の犯罪について二重に処罰するものでない限り、量刑上の不利益が生じても憲法39条の二重処罰禁止の規定には違反しない。
問題の所在(論点)
同一の犯罪について重ねて処罰されたわけではない状況において、量刑等の不利益を理由に憲法39条違反(二重処罰の禁止)を主張できるか。
規範
憲法39条後段が禁止する「二重の処罰」とは、一個の犯罪行為に対して国家が二度刑罰を科すことを指す。したがって、手続上の不利益や量刑の判断において過去の事情が考慮されたとしても、それが新たな刑罰の賦課でない限り、同条には違反しない。
重要事実
被告人が上告審において、量刑の不当性や憲法14条・39条違反を主張した事案。弁護人は、本件の処罰が二重処罰にあたると主張して上告したが、具体的な事案の詳細は本決定文からは不明である。
あてはめ
本件において、被告人は同一の犯罪について二重に処罰されたものではない。弁護人が主張する憲法39条違反の点は、二重処罰の事実が存在しない以上、その前提を欠いている。また、量刑不当や憲法14条違反をいう点は、実質において単なる量刑不当の主張に帰し、適法な上告理由にはあたらない。
事件番号: 昭和59(あ)1559 / 裁判年月日: 昭和60年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を量刑の資料とする際、それが実質的に未起訴の犯罪を処罰する趣旨で考慮されたものでない限り、憲法31条及び39条には反しない。 第1 事案の概要:被告人は有印私文書偽造・同行使等の罪で起訴された。第一審判決は、本件各犯行の犯罪組成物件を没収するとともに、未起訴の事実(余罪)を量刑の資料として考慮…
結論
本件は二重処罰にはあたらず、憲法39条違反の主張は前提を欠くため、上告を棄却する。
実務上の射程
憲法39条の「二重の処罰」の意義を限定的に解釈する際の根拠として利用できる。特に、行政罰と刑事罰の併科や、過去の犯罪歴を量刑上考慮する場合に、それが直ちに二重処罰に該当しないことを論証する際の補強材料となる。
事件番号: 昭和47(あ)1672 / 裁判年月日: 昭和47年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】下級審の有罪判決に対し、検察官がより重い刑を求めて上訴することは、憲法39条後段の二重処罰の禁止に違反しない。 第1 事案の概要:下級審において被告人に有罪判決が言い渡されたが、検察官はこの量刑を不服とし、より重い刑を求めて上訴を提起した。これに対し弁護人は、検察官による不利益な上訴は被告人を重ね…
事件番号: 昭和44(あ)735 / 裁判年月日: 昭和46年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】科刑上一罪の関係にある公訴事実の一部について第一次控訴審が実質的無罪の判断を示した場合、被告人のみの上告であっても当該無罪部分は有罪部分と共に移審し、差戻判決によって再び控訴審に係属するため、二重処罰の禁止には触れない。 第1 事案の概要:被告人は牽連犯(科刑上一罪)として起訴されたが、第一次控訴…
事件番号: 昭和41(あ)2665 / 裁判年月日: 昭和42年5月4日 / 結論: 棄却
控訴審が第一審判決の刑を重く変更した場合に、これに対し更に権利として不服申立をする途がないからといつて何ら憲法の規定に違反しないことは、昭和二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)および昭和二三年三月一〇日大法廷判決(刑集二巻三号一七五頁)の趣旨に徴し明らかである。
事件番号: 昭和28(あ)4639 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が定める「公平な裁判所」とは、裁判官が被告人と個人的な利害関係を持つ等の不偏不党性を欠く状態にない組織を指し、当事者が主観的に不公平と感じるか否かによって決まるものではない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決の量刑が不当であることを理由として、憲法37条1項の保障する「公平な裁判所…