検察官控訴に基づき第一審判決の刑より重い刑を言渡すことと憲法三九条
憲法39条
判旨
検察官による量刑不当を理由とした控訴に基づき、控訴審が第一審より重い刑を言い渡すことは、憲法39条の二重処罰の禁止に違反しない。また、検察官による上訴権の行使が濫用にあたらない限り、憲法31条の適正手続にも反しない。
問題の所在(論点)
検察官による量刑不当を理由とする控訴により、控訴審が第一審判決よりも重い刑を言い渡すことが、憲法39条(二重処罰の禁止)および憲法31条(適正手続の保障・上訴権濫用)に違反しないか。
規範
1. 検察官が第一審判決の量刑不当を理由に控訴を申し立て、控訴審が第一審判決を破棄してこれより重い刑を言い渡すことは、憲法39条の趣旨に照らし許容される。2. 検察官の上訴権行使が実質的にみて上訴権の濫用に当たらない限り、憲法31条等の適正手続に反することはない。
重要事実
被告人に対し第一審判決が言い渡されたが、検察官がその量刑が不当に軽いとして控訴を申し立てた。控訴審において検察官の主張が理由ありと認められ、第一審判決が破棄された上で、被告人に対して第一審よりも重い刑が言い渡された。これに対し被告人側が、二重処罰の禁止(憲法39条)および適正手続(憲法31条)に違反するとして上告したもの。
あてはめ
憲法39条に関しては、先行する大法廷判決の趣旨を引用し、一連の手続内での量刑変更は二重処罰には当たらないと判断した。憲法31条に関しては、本件記録を照査しても、検察官がその裁量権を逸脱して不当に上訴権を行使した、あるいは被告人に不当な不利益を強いた事実は認められず、上訴権の濫用は存在しないと評価した。
結論
検察官の控訴により第一審より重い刑を言い渡すことは憲法39条に違反せず、本件において検察官の上訴権濫用も認められないため、憲法31条違反の主張も理由がない。
実務上の射程
検察官による「不利益変更」を目的とした控訴の合憲性を肯定する重要な判例である。刑訴法402条(不利益変更禁止の原則)は被告人が控訴等をした場合にのみ適用されることを前提に、検察官控訴における量刑引き上げが憲法上の二重処罰禁止に抵触しないことを示す際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和48(あ)2707 / 裁判年月日: 昭和49年2月21日 / 結論: 棄却
検察官が控訴を申し立てて第一審判決の刑より重い刑の判決を求め、控訴裁判所が右申立を理由ありと認めて第一審判決を破棄しこれより重い刑を言い渡すことが憲法三九条に違反するものでないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の趣旨とするところである。
事件番号: 昭和47(あ)2639 / 裁判年月日: 昭和48年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官控訴に基づき、量刑不当を理由に第一審判決を破棄して自判することは、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものではないため、憲法39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し第一審判決が言い渡された後、検察官が量刑不当を理由に控訴を申し立てた。原審(控訴審)は、この検察官控訴を理由が…
事件番号: 昭和46(あ)637 / 裁判年月日: 昭和46年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前科を量刑上の事情として参酌することは、憲法39条後段の二重の処罰の禁止に抵触しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件により起訴され、その裁判の量刑判断において、被告人に前科がある事実が参酌された。弁護人は、このように前科を量刑上参酌することは、既に処罰を受けた行為を実質的に再度処罰するもので…