判旨
懲役刑の執行と未決勾留状の執行が競合している場合、実態として一個の拘禁のみが存在するため、刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、刑法21条の適用誤りとして許されない。
問題の所在(論点)
懲役刑の執行と未決勾留状の執行が重複(競合)している場合において、当該重複期間を刑法21条に基づき本刑に算入することができるか。
規範
刑の執行と勾留状の執行が競合している場合には、懲役刑の執行としては一個の拘禁のみが存在するものと解すべきである。したがって、既に確定した刑の執行を受けている期間と重複する未決勾留日数を、別個の事件の本刑に算入することは、被告人に不当な利益を与えるものであり、刑法21条に照らして許容されない。
重要事実
被告人は、本件(別件)につき昭和33年4月から勾留されていたが、同年7月に前科(窃盗罪・懲役1年)の判決が確定したため、同年8月からその刑の執行を受けていた。第一審判決は本件につき懲役1年2月等に処し未決勾留日数の一部を算入したが、控訴審(原審)は控訴棄却とともに、原審での未決勾留日数のうち100日を算入する旨を言い渡した。しかし、この100日間は、被告人が前科の確定刑の執行を受けていた期間と完全に重複していた。
あてはめ
被告人は昭和33年8月から前示確定刑(懲役1年)の執行を受けており、原審での未決勾留期間はすべてこの確定刑の執行期間と重複している。このように刑の執行と勾留が競合する場合、拘禁の実態は一個である。それにもかかわらず、原審がこの重複期間を本件の本刑に算入したことは、二重に利益を与える結果となり、刑法21条の解釈を誤ったものといえる。したがって、算入を認めた原判決の部分は破棄を免れない。
結論
確定刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは違法であり、当該算入部分は破棄されるべきである。
実務上の射程
未決勾留日数の算入(刑法21条)の限界を示す。実務上、被告人が他の確定刑の執行を受けている(受刑中の)期間に、別件の勾留がなされていても、その期間は「未決勾留」としての実質を欠くため、算入の対象外となる。答案上は、勾留期間が刑の執行と重複していないか事実関係を精査する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和32(あ)1884 / 裁判年月日: 昭和33年1月28日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】他の刑の執行期間と未決勾留の期間が競合している場合、当該期間を未決勾留日数として本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は詐欺事件で勾留されていたが、その勾留期間中に別件の常習賭博罪の懲役刑が確定し、刑の執行を受けた。第一審及び原審は、この他罪の刑の執行を受けている期間についても、…