一 関税法三条によれば輸入貨物には関税定率法により関税を課す旨定めているが、同法別表輸入税表一一四〇は「紙幣、銀行券」を無税としている。紙幣銀行券は無税ではあるが関税法上貨物であることはこれによつて明らかである。紙幣銀行券が外国為替及び外国貿易管理法において支払手段として取扱つているからといつて、右関税法並びに関税定率法の適用を排除すべき謂われはない。銀行券を関税法に規定する貨物に当るとする原判示は正当である。 二 原判決が所論出入国管理令違反罪と関税法違反罪を併合罪の関係にあるとしたのは正当である。 三 (事案の要旨)被告人は昭和三二年四月二六日午後三時頃釜山を出航し同二七日午前零時頃a町大字b海岸に不法上陸しその際銀行券並びにパイプを携行輸入した
一 銀行券は関税法に規定する貨物にあたるか 二 出入国管理令違反罪(密入国)と関税法違反罪(密輸入)との関係
関税法3条,外国為替及び外国貿易管理法45条,関税定率法別表輸入税表1140,出入国管理令3条,出入国管理令70条1号,刑法45条
判旨
「紙幣、銀行券」は、関税定率法の別表輸入税表において無税とされているが、関税法上の「貨物」に該当する。また、外国為替及び外国貿易管理法において支払手段として取り扱われていることは、関税法等の適用を妨げるものではない。
問題の所在(論点)
関税法に規定される「貨物」に「紙幣・銀行券」が含まれるか。また、これらが外国為替法上の支払手段に該当することによって、関税法等の適用が排除されるか。
規範
関税法および関税定率法の解釈において、特定の物品が関税定率法別表の輸入税表に掲げられている場合には、たとえそれが無税とされていても、関税法上の「貨物」に該当する。また、他の行政法規(外国為替及び外国貿易管理法等)における定義は、関税法上の物品の性質を直ちに排斥するものではない。
重要事実
事件番号: 昭和37(あ)1322 / 裁判年月日: 昭和39年4月22日 / 結論: 棄却
韓国銀行券が関税法にいう貨物に当るとした原判示は相当である(昭和三〇年(あ)第四七六号同三二年一〇月一一日第二小法廷決定、刑集一一巻一〇号二五七一頁・昭和三五年(あ)第七〇四号同三七年一〇月三〇日第三小法廷判決、刑集一六巻一〇号一四三四頁各参照)。
被告人らは、銀行券を輸入した行為について関税法違反等に問われた。弁護側は、銀行券は外国為替及び外国貿易管理法上の「支払手段」であり、関税法上の「貨物」には当たらないと主張して上告した。また、出入国管理令違反罪と関税法違反罪の罪数関係についても争われた。
あてはめ
関税法3条は輸入貨物に対し関税定率法により関税を課す旨を定めているところ、同法別表輸入税表1140は「紙幣、銀行券」を掲げ、これを「無税」と明記している。この記載は、紙幣・銀行券が関税法上の「貨物」であることを前提とするものである。したがって、これらが支払手段としての性質を有していたとしても、関税法上の「貨物」としての性質を失うものではなく、同法の適用は排除されない。
結論
銀行券は関税法上の「貨物」に該当し、原判決が本罪を認めたことは正当である。また、出入国管理令違反罪と関税法違反罪は併合罪の関係にある。
実務上の射程
行政法規の交錯場面において、各法律の目的や定義規定に基づき、同一の対象物が複数の法的性質(支払手段と貨物)を併せ持ち得ることを示した。刑法各論や特別刑法における「財物」「貨物」の意義を検討する際の解釈指針となる。
事件番号: 昭和33(あ)2335 / 裁判年月日: 昭和37年5月1日 / 結論: 破棄自判
一 出入国管理令第二五条第二項の規定に違反して出国した被告人の所為につき、同令第七一条を適用処断した原判決は、憲法第二二条第二項に違反するものでないこと明らかである。 二 密入国者がその密入国に際して、携帯貨物を税関の許可を受けないで、携帯輸入したときは、その密入国の罪と密輸入の罪とは併合罪の関係にある。
事件番号: 昭和38(あ)198 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
原判決が関税法第一一二条違反罪と同法第一一〇条違反罪との関係を、刑訴法第九条第二項にいわゆる「賍物に関する罪とその本犯の罪」との関係と同一視すべきものとし、右両者を関連事件としたのは相当である。
事件番号: 昭和36(あ)1198 / 裁判年月日: 昭和40年11月26日 / 結論: 棄却
一 「本件の場合は、右支払当時貨物は特定していたと認められるばかりか、外国為替及び外国貿易管理法第二八条にいう外国にある財産は特定し得るものであれば足り、必ずしも支払時において特定していることを要しない」旨の原判断は正当である。 二 同条にいわゆる関連支払の禁止は、代償支払禁止の補完的規定であるから、外国にある財産取得…
事件番号: 昭和33(あ)1248 / 裁判年月日: 昭和34年2月5日 / 結論: 棄却
本邦入国者が、入国に際し、別送して輸入しようとする自動車は、それが入国者の出発地または経由地において積み出されたものでないかぎり、輸入貿易管理令(昭和三一年一一月一四日政令第三四二号による改正前のもの)第一四条第二号別表第二にいわゆる「携帯品」と認めることはできない。