一 出入国管理令第二五条第二項の規定に違反して出国した被告人の所為につき、同令第七一条を適用処断した原判決は、憲法第二二条第二項に違反するものでないこと明らかである。 二 密入国者がその密入国に際して、携帯貨物を税関の許可を受けないで、携帯輸入したときは、その密入国の罪と密輸入の罪とは併合罪の関係にある。
一 出入国管理令第二五条第二項、第七一条の合憲性 二 密入国の罪とその犯人による携帯貨物の密輸入の罪との罪数
出入国管理令25条2項,出入国管理令71条,出入国管理令3条,出入国管理令70条1号,憲法22条2項,関税法111条1項,刑法45条
判旨
密出国・密入国による出入国管理令違反罪と、貨物の密輸入による関税法違反罪とは、併合罪(刑法45条前段)の関係に立つ。
問題の所在(論点)
出入国管理令に違反する密出国・密入国罪と、関税法に違反する密輸入罪との間の罪数関係(併合罪か観念的競合か)。
規範
同一の行為が複数の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)ではなく、各罪が独立した行為に基づき、保護法益や構成要件的態様を異にする場合は、併合罪(刑法45条前段)として処理すべきである。
重要事実
被告人は、有効な旅券を所持せず正規の出入国手続を経ないで日本から出国し(密出国)、その後再び日本に不法に入国した(密入国)。その際、金指輪や日本銀行券等の貨物を税関長の許可を受けずに輸入した(密輸入)。原審はこれらの罪数関係について判断を示したが、検察官は出入国管理令違反と関税法違反が併合罪の関係にあると主張して上告した。
事件番号: 昭和32(あ)2968 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
一 関税法三条によれば輸入貨物には関税定率法により関税を課す旨定めているが、同法別表輸入税表一一四〇は「紙幣、銀行券」を無税としている。紙幣銀行券は無税ではあるが関税法上貨物であることはこれによつて明らかである。紙幣銀行券が外国為替及び外国貿易管理法において支払手段として取扱つているからといつて、右関税法並びに関税定率…
あてはめ
出入国管理令違反罪は、国の出入国管理の適正を保護法益とするものである。一方、関税法違反罪(密輸入罪)は、適正な関税徴収及び輸出入物品の取締りを保護法益とする。両者は、不法な移動という側面で関連し得るものの、行為の態様及び保護法益が全く別個である。したがって、密出国・密入国の行為と密輸入の行為は、社会通念上一個の行為とは認められず、それぞれ独立した罪として併合罪の関係にあると解するのが相当である。
結論
出入国管理令違反罪と関税法違反罪は併合罪の関係にある。本件被告人に対し、これらを併合罪として処断し、懲役6月に処した。
実務上の射程
密入国等の際に付随して行われる犯罪(密輸や密航助長など)との罪数関係において、保護法益の異同から併合罪と判断する際の有力な先例となる。答案上は、数個の行為が時間的・場所的に近接していても、各規定の趣旨・法益が異なることを根拠に、併合罪とするロジックとして活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)1312 / 裁判年月日: 昭和33年10月27日 / 結論: 棄却
関税法第一一一条第一項に違反する無許可輸入と同法第一一〇条第一項に違反する関税逋脱とを一個の所為で行うときは、観念的競合と解すべきである。
事件番号: 昭和38(あ)198 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
原判決が関税法第一一二条違反罪と同法第一一〇条違反罪との関係を、刑訴法第九条第二項にいわゆる「賍物に関する罪とその本犯の罪」との関係と同一視すべきものとし、右両者を関連事件としたのは相当である。
事件番号: 昭和33(あ)258 / 裁判年月日: 昭和33年10月6日 / 結論: 棄却
関税法第一一一条第一項にいう「貨物を輸入」する行為は、海上にあつては、正当な通関手続を経ないで外国貨物を本邦へ陸揚げすることにより既遂となる。