税関長の許可を受けず、かつ、関税を免れて輸入したけん銃および実包を買い受けて取得したとの関税法違反の罪と、法定の除外事由がなく、かつ、公安委員会の許可を受けないでそのけん銃および実包を所持したとの銃砲等剣類所持刀取締法違反および火薬類取締法違反の各罪とは、併合罪の関係にある。
密輸けん銃および実包の故買の罪とそのけん銃および実包の不法所持の罪との罪数関係
関税法112条1項,銃砲刀剣類所持等取締法3条1項,銃砲刀剣類所持等取締法31条2第1項,火薬類取締法21条,火薬類取締法59条2号,刑法45条,刑法54条1項
判旨
密輸入されたけん銃等を買い受けて取得した関税法違反の罪と、その後の不法所持による銃砲刀剣類所持等取締法違反等の罪は、通常手段結果の関係にあるとはいえず、牽連犯ではなく併合罪となる。
問題の所在(論点)
密輸入された禁制品を買い受けたことによる関税法違反の罪と、その後の継続的な不法所持による銃取法違反等の罪が、刑法54条1項後段の牽連犯にあたるか、それとも刑法45条の併合罪にあたるか。
規範
刑法54条1項後段の「犯罪の手段又は結果である行為」とは、ある罪が他の罪の手段または結果となることが、その罪の性質上、社会通念上において通常の状態として認められる関係にあることを要する。一方の罪が他方の罪を犯すために当然に予定されている関係にない場合は、併合罪(刑法45条)として処理すべきである。
重要事実
被告人は、税関長の許可を受けず、かつ関税を免れて輸入されたけん銃および実包を買い受けて取得した(関税法違反)。その後、被告人は公安委員会の許可を受けるなどの法定の除外事由がないにもかかわらず、当該けん銃および実包を継続して所持した(銃砲刀剣類所持等取締法違反および火薬類取締法違反)。
事件番号: 昭和41(あ)1354 / 裁判年月日: 昭和42年3月14日 / 結論: 棄却
一 密輸拳銃故買(関税法第一一二条第一項)の罪と同一拳銃の不法所持(銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項違反)の罪とは、観念的競合の関係に立たない。 二 刑法総則の規定である同法第四五条前段、第四八条第一項のような規定は、これを適用した趣旨であることが、原判決自体から明らかに認められる以上、その適用をあえて掲げてなくても…
あてはめ
関税法違反(密輸入・買い受け)は、禁制品の輸入手続の適正を侵害する罪である。これに対し、銃取法違反等は、危険物の所持を規制し公共の安全を維持する罪である。禁制品を買い受けて取得したとしても、その後の不法所持が当然に予定されているとはいえず、両罪が社会通念上、通常手段・結果の関係にあるということはできない。したがって、犯罪の手段・結果という密接な関係は認められず、個別の犯罪として成立すると評価される。
結論
本件各罪は牽連犯ではなく併合罪となる。原判決の判断は正当である。
実務上の射程
密輸・取得行為とその後の所持行為の罪数関係を判断する際の指標となる。一般に、取得と所持が当然に予定されている関係(例:偽造通貨行使と行使目的の所持)とは異なり、密輸入と銃器所持は保護法益や規制の趣旨が異なるため、併合罪として重く処断される可能性が高いことを示唆している。
事件番号: 昭和38(あ)198 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
原判決が関税法第一一二条違反罪と同法第一一〇条違反罪との関係を、刑訴法第九条第二項にいわゆる「賍物に関する罪とその本犯の罪」との関係と同一視すべきものとし、右両者を関連事件としたのは相当である。
事件番号: 昭和27(あ)3030 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反が同一の行為により成立する場合、両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立ち、最も重い刑により処断される。 第1 事案の概要:被告人は、輸入貨物である中双糖及び含密糖の密輸入に関連して、関税法違反および貿易等臨時措置令(後の外国為替及び外国貿易管理法)違反の罪に…
事件番号: 昭和49(あ)1431 / 裁判年月日: 昭和49年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法54条1項前段の「一個の行為」とは、自然的観察のもとで行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価される場合をいい、麻薬を身体に携帯して本邦に搬入する行為は、麻薬取締法違反と関税法違反の観念的競合となる。 第1 事案の概要:被告人は、関税定率法上の輸入禁制品であり、かつ麻薬取締法上も輸入が禁止さ…
事件番号: 昭和33(あ)2335 / 裁判年月日: 昭和37年5月1日 / 結論: 破棄自判
一 出入国管理令第二五条第二項の規定に違反して出国した被告人の所為につき、同令第七一条を適用処断した原判決は、憲法第二二条第二項に違反するものでないこと明らかである。 二 密入国者がその密入国に際して、携帯貨物を税関の許可を受けないで、携帯輸入したときは、その密入国の罪と密輸入の罪とは併合罪の関係にある。