判旨
関税法違反と貿易等臨時措置令違反が同一の行為により成立する場合、両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立ち、最も重い刑により処断される。
問題の所在(論点)
一個の輸入行為に関し、関税法違反の罪と貿易等臨時措置令違反の罪が成立する場合、両罪は併合罪(刑法45条)となるか、あるいは観念的競合(刑法54条1項前段)となるか。
規範
一個の行為が数個の罪名に触れる場合(観念的競合)は、刑法54条1項前段に基づき、その最も重い刑により処断する。数個の罪名が同一の犯罪事実を包含する関係にあるときは、処断上一個の刑罰として扱うべきである。
重要事実
被告人は、輸入貨物である中双糖及び含密糖の密輸入に関連して、関税法違反および貿易等臨時措置令(後の外国為替及び外国貿易管理法)違反の罪に問われた。一連の輸入行為によってこれら複数の法令に抵触する事実が発生したため、その罪数関係が問題となった。また、併せて物価統制令違反についても起訴されていたが、これについては政令による大赦があった。
あてはめ
被告人の行為は、関税法に定める無許可輸入の点と、貿易等臨時措置令に定める輸入制限違反の点において、それぞれ罪を構成するものである。しかし、これらは同一の輸入行為という「一個の行為」によって引き起こされたものであり、数個の罪名に触れる場合に該当する。したがって、刑法54条1項前段および10条を適用し、法定刑のより重い関税法違反の刑に従って量刑を決定するのが相当である。
結論
関税法違反と貿易等臨時措置令違反は観念的競合の関係にある。重い方の関税法違反の刑により処断し、懲役刑と罰金刑を併科するとともに、没収・追徴を命ずる。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(あ)2864 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反、およびそれらの幇助行為が、いずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合には、刑法54条1項前段により観念的競合として処理すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年6月、正規の引揚船ではない発動機船に乗船して鹿児島県から佐賀県へ上陸し、不法に入国した。その…
輸出入犯罪において、関税法と外為法等の特別法が重複して適用される場合、その行為の同一性に基づき観念的競合として処理すべきことを示す。罪数判断において行為の単一性が認められる場合の標準的な処理例として参照される。
事件番号: 昭和31(あ)1312 / 裁判年月日: 昭和33年10月27日 / 結論: 棄却
関税法第一一一条第一項に違反する無許可輸入と同法第一一〇条第一項に違反する関税逋脱とを一個の所為で行うときは、観念的競合と解すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)2852 / 裁判年月日: 昭和29年7月2日 / 結論: その他
特定の密輸入貨物全部の運搬保管方法依頼を受けて、その一部をある倉庫まで運搬して寄蔵し、さらに同時刻頃引続いて残りの貨物を附近の他の倉庫まで運搬して寄蔵したときは一罪を構成する。
事件番号: 昭和26(れ)1504 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
右追公判請求書によれば検察官はA等において本件帆布を前記代金にて販売したときに横領行為が完成したものとして公訴を提起した趣旨と認められる。されば、横領罪を構成するものとして起訴された被告人A等の右販売行為が他面において物価統制令に違反するのであるから、刑法五四一条一項前段にいう一個の行為が他の罪名に触れる場合に当り、公…