判旨
関税法違反と貿易等臨時措置令違反、およびそれらの幇助行為が、いずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合には、刑法54条1項前段により観念的競合として処理すべきである。
問題の所在(論点)
関税法違反の罪と貿易等臨時措置令違反の罪が、同一の輸入行為に関連して行われた場合、両罪の関係をいかに解すべきか。
規範
一個の行為が複数の罪名に触れる場合、刑法54条1項前段(観念的競合)を適用し、そのうちの最も重い刑をもって処断する。
重要事実
被告人は、昭和24年6月、正規の引揚船ではない発動機船に乗船して鹿児島県から佐賀県へ上陸し、不法に入国した。その際、黒砂糖150斤を携行しており、関税法違反(無許可輸入等)および貿易等臨時措置令違反、ならびにそれらの幇助の事実で起訴された。
あてはめ
被告人による黒砂糖の輸入行為(およびその幇助行為)は、関税法違反と貿易等臨時措置令違反の双方の構成要件に該当する。これらの各罪は、一つの輸入にかかる行為から生じたものであり、一個の行為で数個の罪名に触れる場合に当たる。したがって、刑法54条1項前段により観念的競合となり、最も重い関税法違反罪の刑に従って処断されるべきである。なお、不法入国の点については、その後の大赦により免訴となる。
結論
被告人の行為は関税法違反と貿易等臨時措置令違反の観念的競合となり、刑法54条1項前段を適用して、重い関税法違反罪の刑により懲役3月および没収に処する。
実務上の射程
一つの密輸行為が複数の取締法規(関税法、外国為替及び外国貿易法等)に抵触する場合に、観念的競合として処断すべきことを示す。罪数判断において行為の単一性を重視する実務上の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和26(あ)2478 / 裁判年月日: 昭和27年11月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不承認での輸出入行為と無免許での輸出入行為が同時に行われた場合、それらは一個の行為で数個の罪名に触れるものとして、刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立つ。 第1 事案の概要:被告人は、機帆船を用いて黒糖や石油、粉乳等の貨物を、主務大臣の承認を得ることなく、かつ税関長の免許を受けることなく輸出入…
事件番号: 昭和26(あ)663 / 裁判年月日: 昭和27年12月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】無許可輸入の幇助行為が、外国為替及び外国貿易管理法違反と関税法違反の双方に該当する場合、これらは一個の行為によって数個の罪名に触れるものとして、刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立つ。 第1 事案の概要:被告人は、通商産業大臣の許可を受けないで貨物を輸入する行為、および税関長の免許を受けないで…
事件番号: 昭和26(あ)4097 / 裁判年月日: 昭和27年10月10日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人間に起訴・不起訴や没収の有無の差があっても、それが裁判所の恣意的な差別待遇でない限り、憲法14条の法の下の平等に反しない。また、憲法37条(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)は、個別の具体的事件における処理の適否を直接対象とするものではない。 第1 事案の概要:被告人Aら複数が関税法…
事件番号: 昭和27(あ)3030 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反が同一の行為により成立する場合、両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立ち、最も重い刑により処断される。 第1 事案の概要:被告人は、輸入貨物である中双糖及び含密糖の密輸入に関連して、関税法違反および貿易等臨時措置令(後の外国為替及び外国貿易管理法)違反の罪に…
事件番号: 昭和24新(れ)458 / 裁判年月日: 昭和25年5月30日 / 結論: 棄却
一 昭和二一年勅令第二七七號關税法の罰則等の特例に關する件第一條第二項に所謂「輸出しようとした者」とは、目的の物品を、日本領土外に仕向けられた船舶に積載する行爲の實行には達しなくても、輸出のための單なる準備行爲の範圍を超えて、右積載行爲に接着近接した手段行爲の遂行に入つた者を指稱することは當裁判所の判例の示すところであ…