一 昭和二一年勅令第二七七號關税法の罰則等の特例に關する件第一條第二項に所謂「輸出しようとした者」とは、目的の物品を、日本領土外に仕向けられた船舶に積載する行爲の實行には達しなくても、輸出のための單なる準備行爲の範圍を超えて、右積載行爲に接着近接した手段行爲の遂行に入つた者を指稱することは當裁判所の判例の示すところである。(昭和二三年(れ)第四五〇號同年八月五日第一小法廷參照) 二 第一審判決が昭和二三年法律第一〇七号による改正後の関税法第七六条を適用すべき犯罪行為に対し同法条を適用せず、行為当時既に廃止された昭和二一年勅令第二七七條(昭和二〇年勅令第五四二号ポツダム宣言の受諾に伴い發する命令に関する件に基く関税法の罰則等の特例に関する件)を適用しても、その宣告刑が関税法第七六條所定の刑期範圍内であるときは、右第一審判決を維持した原判決を刑訴法代四一一條に該当する事由あるものとはいえない。
一 昭和二一年勅令第二七七號關税法の罰則の特例に關する件第一條第二項の「輸出しようとした者」の意義 二 刑訴法第四一一條に該当しない一事例
昭和21年勅令277號關税法の罰則の特例に關する件1條2項,昭和21年勅令277号(昭和20年勅令542号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く関税法の罰則等の特例に関する件),刑訴法42條,昭和23年法律107号による改正後の関税法76条
判旨
関税法における輸出予備罪等の「輸出しようとした者」とは、単なる準備行為を超え、物品を船舶に積載する行為に接着近接した手段行為を開始した者を指す。
問題の所在(論点)
旧関税法等の罰則にいう「輸出しようとした者」(輸出罪の実行の着手)の意義、および単なる「準備行為」と「接着近接した手段行為」の区別が問題となる。
規範
実行の着手時期について、目的物品を日本領土外に仕向けられた船舶に積載する行為の実行に達しない場合であっても、輸出のための単なる準備行為の範囲を超えて、右積載行為に接着近接した手段行為の遂行に入ったことを要する(密輸出の着手時期に関する近接性基準)。
事件番号: 昭和24(れ)219 / 裁判年月日: 昭和24年6月28日 / 結論: 棄却
關税法所定の輸出行爲は、海上にあつては目的の物品を日本領土外に仕向けられた船舶に積載することによつて完成するものであるが、その完成に至る前でも、工作が既に上記の程度に進捗したものは、關税法の罰則等の特例に關する勅令第一條第二項にいわゆる「輸出しようとした者」に該ると解すべきである。
重要事実
被告人は、物品を朝鮮へ密輸出する目的で、当日密航船が来るという情報を信じ、当該物品を海岸まで運び込んだ。原審は、この「運び込み」等の行為を「輸出の準備をした」と表現した上で、被告人の行為を関税法等の罰則(輸出しようとした者)に該当すると判断した。
あてはめ
被告人は単に密輸出の主観的意図を有していただけでなく、具体的に朝鮮向け船舶に積載することを目的として、積載場所である海岸まで現実に物品を運び込んでいる。この行為は、船舶への積載という実行行為に時間的・空間的に直接連続するものであり、単なる予備・準備の段階を超え、積載行為に接着近接した手段行為の遂行に入ったものと評価できる。
結論
被告人の行為は、輸出のための単なる準備行為の範囲を超え、積載行為に接着近接した手段行為の遂行に入った「輸出しようとした者」に該当する。
実務上の射程
実行の着手時期に関する「密接性」を具体化する際の基準となる。答案では、単なる準備(予備)と実行の着手の境界を画するにあたり、「実行行為に接着近接した手段行為」という表現を使い、運び込み等の事実から実行行為(積載)への危険が切迫していることを論証するのに有効である。
事件番号: 昭和25(れ)433 / 裁判年月日: 昭和25年9月19日 / 結論: 棄却
所論のように朝鮮向け船舶が當時絶對に存在しなかつたということは原審の認定しない事實であつて、原判決の摘示事實とその舉げている證據によれば、かかる船舶が存在し被告人等もこれが來航を豫期して密輸出物資を多量に買入れ、これと朝鮮在住者宛の手紙等を取り纒めて梱包し、貨物自動車二台に積載し、眞夜中ひそかに海岸近くまで運搬したので…
事件番号: 昭和25(れ)1208 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
一 本件においてA丸が舞鶴港から福井縣三国港に向け出航する予定であつたことは所論のとおりであるが被告人等は右三国港から朝鮮向けの密航船があること及び同船に連絡する船が舞鶴港から出航することを聞知し此の機会を利して朝鮮えの物品の密輸出を企て判示物件をA丸に積込んだものであり原判決挙示の証拠によればその頃密航船が航行してい…
事件番号: 昭和27(あ)6454 / 裁判年月日: 昭和29年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実行の着手は、犯行を企図した意思が外部に現れた行為といえるか否かによって判断され、密輸出の予備行為を超え、客観的に密輸出に至る危険性が認められる行為があった場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、貨物を朝鮮へ密輸出することを企図し、互いに共謀した。被告人らは、密輸出の実現に向けて具…
事件番号: 昭和24(れ)2837 / 裁判年月日: 昭和25年4月18日 / 結論: 破棄差戻
昭和二三年法律第一〇七號に依る改正後の關税法第七六條第一項違反の罪を判示するにはその無免許輸出若しくは輸入に係る貨物の原價を確定判示しなければならない。