關税法所定の輸出行爲は、海上にあつては目的の物品を日本領土外に仕向けられた船舶に積載することによつて完成するものであるが、その完成に至る前でも、工作が既に上記の程度に進捗したものは、關税法の罰則等の特例に關する勅令第一條第二項にいわゆる「輸出しようとした者」に該ると解すべきである。
關税法の罰則等の特例に關する勅令第一條第二項にいわゆる「輸出しようとした者」に該る一場合
昭和21年勅令277號(關税法の罰則等の特例に関する勅令),昭和21年勅令1條2項
判旨
関税法上の輸出未遂罪における「輸出しようとした」とは、物品を日本領土外へ向かう船舶に積載して輸出を完成させる前であっても、その実行に向けた工作が密接かつ確実な段階に進捗した状態を指す。
問題の所在(論点)
関税法の罰則等に関する特例勅令1条2項にいう「輸出しようとした者」(輸出未遂罪)の成立時期(実行の着手時期)が問題となる。
規範
「輸出しようとした」とは、関税法上の輸出行為(日本領土外に仕向けられた船舶への物品積載)が完成する前であっても、輸出の実行に向けた工作が、客観的に見て輸出の完成に直結する程度に進捗していることをいう。
重要事実
被告人は、税関の免許を受けずに判示物品を日本から朝鮮へ輸出することを計画した。対馬において朝鮮行の便船に積載する目的で、まず対馬に渡り、同島の港から物品を船に積み込んだ。被告人は自らもその船に便乗して出帆し、目的地の対馬内A地点(朝鮮への積み替え地点)に到着する直前に摘発された。
事件番号: 昭和26(れ)272 / 裁判年月日: 昭和26年5月17日 / 結論: 棄却
被告人A、第一審被告人B外五名等が、それぞれ、貨物を携えて朝鮮に密航しようと企て、被告人Cに同人がDから買受けた機帆船E丸で判示の貨物を輸送することを依頼し同人の承諾をえたので、被告人A等の昭和二三年五月三〇日夕刻頃から午後九時頃迄に、判示貨物を福岡市a町のF事G方飯場内及び同家附近の住宅営団倉庫前に運搬集積して、同所…
あてはめ
被告人は朝鮮へ輸出する確定的な意図の下、物品を船に積み込み、自らも便乗して出帆している。この行為は、朝鮮行の便船に積み替えるという最終段階の直前まで進捗しており、輸出の実現に向けた具体的かつ密接な危険性を有する工作が既になされたといえる。途中に多少の困難(前途の障碍)が想定されたとしても、輸出に向けた一連の行為が実質的に開始され、その完遂が確実視される段階に至っているため、未遂罪の構成要件に該当する。
結論
被告人の行為は「輸出しようとした」ものに該当し、輸出未遂罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、輸出未遂罪の実行の着手時期について、客観的な進捗度を重視して判断したものである。答案上は、構成要件的結果(輸出の完成)に向けた密接な行為が行われ、結果発生の具体的危険性が認められるかという視点から、実行の着手を肯定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和24新(れ)458 / 裁判年月日: 昭和25年5月30日 / 結論: 棄却
一 昭和二一年勅令第二七七號關税法の罰則等の特例に關する件第一條第二項に所謂「輸出しようとした者」とは、目的の物品を、日本領土外に仕向けられた船舶に積載する行爲の實行には達しなくても、輸出のための單なる準備行爲の範圍を超えて、右積載行爲に接着近接した手段行爲の遂行に入つた者を指稱することは當裁判所の判例の示すところであ…
事件番号: 昭和25(れ)1912 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】被告人が運搬・積載に関与した既遂物品と、実際に押収された未遂物品とを混同して事実認定を行い、当該押収物品を既遂罪の証拠として没収することは、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認である。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、C丸を用いた密輸出に関与したとして起訴された。起訴状には密輸出の既遂事実と…
事件番号: 昭和24(れ)2837 / 裁判年月日: 昭和25年4月18日 / 結論: 破棄差戻
昭和二三年法律第一〇七號に依る改正後の關税法第七六條第一項違反の罪を判示するにはその無免許輸出若しくは輸入に係る貨物の原價を確定判示しなければならない。
事件番号: 昭和23(れ)450 / 裁判年月日: 昭和23年8月5日 / 結論: 棄却
一 刑訴應急措置法第一二條は、所定の書類の供述者又は、作成者を訊問する機會を被告人に與へなければ、證據とすることができないとしたに過ぎないものであるから、既にその供述者又は作成者を訊問する機會を被告人に與えた以上その書類を證據とすることを毫も妨ぐるものではない。 二 本件記録によれば被告人は、昭和二二年六月九日判事の勾…