判旨
被告人が運搬・積載に関与した既遂物品と、実際に押収された未遂物品とを混同して事実認定を行い、当該押収物品を既遂罪の証拠として没収することは、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認である。
問題の所在(論点)
既遂罪として判示された事実に対し、実際には未遂に終わった別の物品を対象として没収を言い渡した原判決に、事実誤認の違法があるか。
規範
判決において、犯罪を構成する事実(犯行の既遂・未遂の別)および没収の対象となる物品の特定は、証拠との厳密な対応関係に基づかなければならない。起訴状に記載された複数の訴因(既遂・未遂)のうち、既遂事実のみを判示しながら、実際には未遂に終わったことが明らかな押収物品を既遂物品と認定して没収することは、事実誤認および理由不備の違法を構成する。
重要事実
被告人AおよびBは、C丸を用いた密輸出に関与したとして起訴された。起訴状には密輸出の既遂事実と未遂事実の両方が含まれていた。原審は、被告人らが運搬・積載に関与した物品が、押収された目録記載の物品であると認定し、これを既遂物品として没収した。しかし、記録によれば、被告人らが関与した物品は既に密輸出され朝鮮に陸揚げされていた。一方で、押収された物品は出帆に間に合わず海岸で発見された未遂物品であり、所持者も別人物であった。
あてはめ
原判決は、被告人Aが運搬し、被告人Bが船に積み込んだ物品を、押収された別紙目録記載の物品と同一視している。しかし、証拠によれば、被告人らが関与した物品は既に目的地へ陸揚げされた「既遂」物品であるのに対し、押収物品は船に積み込めず海岸で発見された「未遂」物品であることが明らかである。原判決が「既遂」の事実のみを判示しながら、これと同一性のない「未遂」に係る押収物品を既遂物品と認定し、没収および幇助の対象としたことは、証拠に基づかない事実認定であり、論理的に矛盾している。
結論
原判決には判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認があるため、破棄を免れない。共同被告人についても共通の理由により破棄し、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
事件番号: 昭和26(れ)1121 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が単独で犯罪を実行したとの認定に対し、共犯者の存在を示唆する主張がなされた場合であっても、それが単なる事実誤認の主張にとどまる限り、上告理由には当たらない。最高裁判所は、記録を精査した上で刑訴法411条を適用すべき著しい正義に反する事由がない限り、原判決を維持すべきである。 第1 事案の概要…
実務上の射程
本判決は、事実認定における「既遂」と「未遂」の峻別、および没収対象物の特定について厳格な証拠関係を求めている。答案上は、没収の要件を検討する際や、起訴事実と判決事実の齟齬(事実誤認)を指摘する場面での論理構成として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)219 / 裁判年月日: 昭和24年6月28日 / 結論: 棄却
關税法所定の輸出行爲は、海上にあつては目的の物品を日本領土外に仕向けられた船舶に積載することによつて完成するものであるが、その完成に至る前でも、工作が既に上記の程度に進捗したものは、關税法の罰則等の特例に關する勅令第一條第二項にいわゆる「輸出しようとした者」に該ると解すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)2776 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
仮りに、古い被告人の私物であつて、朝鮮向の貨物でないから沒収をしたのが違法であるとしても、右は判示多数の沒収品中の一点に過ぎないから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認め難い。
事件番号: 昭和23(れ)1846 / 裁判年月日: 昭和24年5月21日 / 結論: 破棄差戻
被告人等は本件物件を取得した相手方乘組員が商船の單なる乘組員であると信じていたもので、その乘組員が所論政令第一條にいわゆる連合國占領軍に附屬若しくは随伴する者に該當することを認識しなかつたことは記録に照し明かであると主張し從つて被告人等はその點に於て違法性の認識がなかつたに拘らず右政令違反として有罪と判定したのは違法で…
事件番号: 昭和26(れ)1282 / 裁判年月日: 昭和26年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣旨が単なる量刑不当の主張に帰する場合、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を提起したが、その上告趣旨の内容は、結局のところ原判決の量刑が重すぎるという量刑不当の主張に帰するものであった。その他の適法な上告…