仮りに、古い被告人の私物であつて、朝鮮向の貨物でないから沒収をしたのが違法であるとしても、右は判示多数の沒収品中の一点に過ぎないから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認め難い。
刑訴第四一一条にあたらない一事例
連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令(昭和21年勅令311号),関税法の罰則等の特例に関する勅令(昭和21年勅令277号)1条,関税法の罰則等の特例に関する勅令(昭和21年勅令277号)9条,刑訴法411条,関税法76条
判旨
多数の物件を没収する際、その中の一部に没収対象外の物が含まれていたとしても、それが多数の没収品中の僅かな一点に過ぎない場合には、原判決を破棄すべき理由にはならない。
問題の所在(論点)
多数の物件を没収する判決において、没収対象物ではない物件が一部含まれていた場合、直ちに原判決を破棄すべき事由(判決に影響を及ぼすべき事実誤認等)となるか。
規範
没収の対象となる物件の認定において、判示された多数の没収品の中に、仮に客観的には没収の要件を満たさない物が極めて限定的な範囲で混入していたとしても、それが全体の量・質に比して軽微であり、判決の結論に影響を及ぼさない程度のものであるならば、原判決を破棄してまで是正する必要はない。
重要事実
被告人は朝鮮向けの貨物を密輸しようとした罪に問われ、原判決は物件目録記載の多数の物件(進行番号100乃至138)を朝鮮向けの貨物として没収した。被告人は、没収品の中に私物の書類や夏帽子(進行番号103)が含まれており、これらは朝鮮向けの貨物ではないと主張して上告した。
事件番号: 昭和23(れ)904 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二二年六月二七日から同年八月二五日までの間において行われた連合国占領軍の財産を不法に所持した行為は、昭和二一年勅令第三一一号第二条第三項、第四条を適用して処断すべきである。 二 證人申請の採否も原審の自由裁量に屬すること言うまでもないから、原審がそれを採用しなかつたからとて、憲法第三七條第一項の公平な裁判所の裁…
あてはめ
本件において、没収された物件の中に被告人の私物書類は認められない。また、進行番号103の夏帽子については、犯行時期(11月)からして着用携帯品とは認め難いが、仮にこれが古い私物であって朝鮮向けの貨物ではないとしても、判示された多数の没収品の中の僅か一点に過ぎない。したがって、このような微細な誤りは、多数の物件を没収するという原判決の結論全体を左右するほど重大な瑕疵とはいえない。
結論
多数の没収品のうち極一部に誤りがあっても、それが判決に影響を及ぼさない程度のものであれば、原判決を破棄するには及ばない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟における没収の適法性において、個別の物件の認定ミスが判決全体の破棄事由になるかの判断基準(可分性と重要性)を示唆する。実務上は、没収品が多量かつ多種類に及ぶ場合、細部の事実誤認があっても判決の主文に影響がない限り、判決が維持される根拠として機能する。
事件番号: 昭和25(れ)1912 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】被告人が運搬・積載に関与した既遂物品と、実際に押収された未遂物品とを混同して事実認定を行い、当該押収物品を既遂罪の証拠として没収することは、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認である。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、C丸を用いた密輸出に関与したとして起訴された。起訴状には密輸出の既遂事実と…
事件番号: 昭和24(れ)2636 / 裁判年月日: 昭和25年7月13日 / 結論: 棄却
一 一九四六年二月一九日附覺書第二項Cは昭和二二年六月二七日附修正覺書を以て削除され、當該行爲に對する日本裁判所の刑事裁判權の行使の制限は解除されると共に同指令第二項の違反行爲は、同日より右司令第四項竝びに昭和二一年勅令第三一一號第四條第三項に基き日本政府が法律規定を修正して、特別の法令を發する迄は(その特別法令は昭和…
事件番号: 昭和24(れ)863 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 棄却
わが國在留の朝鮮人が、たとえ、故國に引揚げるにしても、正規の手續を經ないで、密航することは、原判決掲記のごとき連合國最高指令官の各覺書に示された同司令官の日本國政府に對する司令の趣旨に反することは、右各覺書の内容に照し明らかであり、連合國最高司令官の日本國政府に對する司令の趣旨に反する行爲が、連合國占領軍の占領目的に有…
事件番号: 昭和23(れ)1297 / 裁判年月日: 昭和23年11月4日 / 結論: 破棄差戻
一 昭和二二年政令第六二號(教職員の除去、就職禁止等に關する政令)第七條は單なる注意的、訓示的の警戒規定ではなく、之に對する違反行爲は、昭和二一年勅令第三一一號(聯合國占領軍の占領目的に有害な行爲に對する處罰等に關する勅令)第四條第一項に依り處罰されるものである。 二 昭和二一年勅令第三一一號の罰則を以て常に昭和二二年…