わが國在留の朝鮮人が、たとえ、故國に引揚げるにしても、正規の手續を經ないで、密航することは、原判決掲記のごとき連合國最高指令官の各覺書に示された同司令官の日本國政府に對する司令の趣旨に反することは、右各覺書の内容に照し明らかであり、連合國最高司令官の日本國政府に對する司令の趣旨に反する行爲が、連合國占領軍の占領目的に有害な行爲であることは、昭和二一年六月一二日勅令第三一一號第二條第三項に規定するところである。
日本在留朝鮮人が故國引揚に際し正規の手續を經ないで密航する場合の責任と連合國の占領目的に違反の有無
昭和21年勅令311號2條3項
判旨
正規の手続を経ない日本国外への密航は、連合国最高司令官の指令の趣旨に反し、占領目的に有害な行為として処罰の対象となる。たとえ故国への引揚げであっても、手続に反する以上は違法性が認められる。
問題の所在(論点)
正規の手続を経ない朝鮮人の密航(引揚げ)行為が、昭和21年勅令第311号2条3項にいう「連合国占領軍の占領目的に有害な行為」に該当し、処罰の対象となるか。
規範
連合国最高司令官の日本国政府に対する指令の趣旨に反する行為は、昭和21年勅令第311号2条3項に基づき、占領軍の占領目的に有害な行為として処罰の対象となる。指令において規定された正規の手続を遵守しない渡航は、当該指令の趣旨に反するものと解する。
重要事実
わが国に在留していた朝鮮人である被告人が、故国である朝鮮へ引揚げるに際し、連合国最高司令官の覚書(指令)により定められた正規の手続を経ることなく、密航という手段を用いて出国しようとした事案。
事件番号: 昭和24(れ)1480 / 裁判年月日: 昭和26年7月20日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二〇年一二月連合国軍最高司令官総司令部参謀副官発第三号日本政府に対する覚書、神道指令の4は「日本政府、県及び市町村の凡ての官公吏、属官、雇員並にあらゆる教師、教育職員、市民及び居住者は本指令の一切の規定の字句並に精神を遵守することに対し個人的責任を負うべきものである」と規定しているのであるが、それは右に規定した…
あてはめ
被告人の行為は、朝鮮人の渡航に関する正規の手続を規律した連合国最高司令官の各覚書の趣旨に反するものである。故国への引揚げという目的があったとしても、指令に示された「日本国政府に対する指令の趣旨」を逸脱する密航行為は、客観的にみて同指令の趣旨に反することが明瞭である。したがって、かかる行為は「占領目的に有害な行為」として同勅令の適用範囲に含まれるといえる。
結論
被告人の密航行為は昭和21年勅令第311号2条3項に該当し、同法により処断した原判決は正当である。
実務上の射程
連合国占領下の特殊な法体系における判例であり、現代の出入国管理法制に直接適用される規範ではないが、行政上の手続規定が「目的の正当性」とは独立して罰則の適用根拠となり得る点を示唆している。
事件番号: 昭和26(あ)1601 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領下における連合国最高司令官の許可なき出国行為は、その後の法令改正により許可が不要となった場合、刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」があったものと解される。 第1 事案の概要:被告人は昭和24年12月、連合国最高司令官の許可を受けずに大阪府から沖縄へ不法に出国した。当時の法令(昭和21年勅令31…
事件番号: 昭和25(あ)1209 / 裁判年月日: 昭和26年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で量定された実刑は、被告人にとって過重に感じられたとしても「残虐な刑罰」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は昭和21年勅令311号(連合国軍関係事項)違反の罪に問われ…
事件番号: 昭和23(れ)904 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二二年六月二七日から同年八月二五日までの間において行われた連合国占領軍の財産を不法に所持した行為は、昭和二一年勅令第三一一号第二条第三項、第四条を適用して処断すべきである。 二 證人申請の採否も原審の自由裁量に屬すること言うまでもないから、原審がそれを採用しなかつたからとて、憲法第三七條第一項の公平な裁判所の裁…
事件番号: 昭和24(れ)2776 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
仮りに、古い被告人の私物であつて、朝鮮向の貨物でないから沒収をしたのが違法であるとしても、右は判示多数の沒収品中の一点に過ぎないから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認め難い。