一 昭和二〇年一二月連合国軍最高司令官総司令部参謀副官発第三号日本政府に対する覚書、神道指令の4は「日本政府、県及び市町村の凡ての官公吏、属官、雇員並にあらゆる教師、教育職員、市民及び居住者は本指令の一切の規定の字句並に精神を遵守することに対し個人的責任を負うべきものである」と規定しているのであるが、それは右に規定した者が本指令の一切の規定を遵守する義務があることを総括的に規定したものであつて、「規定の精神を遵守することに対し個人的責任を負うべきものである」というのは、行為が直接本指令の規定に違反しない場合でも本指令の趣旨を類推してこれを処罰するという意味ではない。 二 本指令のIのhは「神道教義の弘布はその形式と手段の如何を問わず全面的又は部分的に公共資金の支援を受ける一切の教育機関によつて為されることを禁止し即時これに停止する」と規定しているのであるから、神道の弘布が公共資金の支援を受ける教育機関によつて為された場合に始めて同規定の違反になることは同規定の字句並に精神から疑のないとこである。 三 神道指令Iのaは「日本国、県及び市町村の行政機関は公的資格において行動する官公吏、属官並びに雇員による神道の保証、支援、保全監督並に弘布を禁止し即時これを停止する」と規定しているのであるから、官公吏に同規定の違反があるとするには官公吏が神道の支援その他所定の行為をするという認識があり、且つ公的資格即ち公務の執行として神道の支援その他の行為をしたことを必要とすることは右規定の解釈上疑のないところである。
一 昭和二〇年一二月連合国最高司令官総司令部参謀副官発第三号日本政府に対する覚書、神道指令の4に所謂「規定の精神を導守することに対し個人的責任を負うべきものである」の意義 二 昭和二〇年一二月連合国軍最高司令官総司令部参謀副官発第三号日本政府に対する覚書、神道指令Iのhの意義 三 昭和二〇年一二月連合国最高司令官総司令部参謀副官発第三号日本政府に対する覚書神道指令Iのaに違反する場合
昭和20年12月連合国軍最高司令官総司令部参謀副官発3号,日本政府に対する覚書,昭和20年12月連合国最高司令官総司令部参謀副官発3号日本政府に対する覚書(神道指令),昭和20年12月連合国最高司令官総司令部参謀副官発3号,日本政府に対する覚書(神道指令),神道指令の4,昭和21年勅令311号2条3項,昭和21年勅令4条1項
判旨
神道指令等への違反が問われる行為について、指令の趣旨を類推して処罰することは許されず、官公吏による違反の成立には、公務の執行として神道を支援等する「認識」と「公的資格での行動」が必要である。
問題の所在(論点)
昭和21年勅令311号(連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令)及び「神道指令」の違反行為の成否。特に、直接の規定がない場合の類推適用の可否、および官公吏による神道支援の成立要件(認識の程度)が問題となった。
事件番号: 昭和24(れ)863 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 棄却
わが國在留の朝鮮人が、たとえ、故國に引揚げるにしても、正規の手續を經ないで、密航することは、原判決掲記のごとき連合國最高指令官の各覺書に示された同司令官の日本國政府に對する司令の趣旨に反することは、右各覺書の内容に照し明らかであり、連合國最高司令官の日本國政府に對する司令の趣旨に反する行爲が、連合國占領軍の占領目的に有…
規範
1. 罰則規定の解釈にあたり、行為が規定の字句に直接該当しない場合に、その趣旨を類推して処罰することは許されない。 2. 官公吏による神道の支援・弘布の禁止規定(神道指令1のa)に違反すると言うためには、①官公吏が神道の支援その他所定の行為をするという「認識」があり、かつ、②公的資格、すなわち「公務の執行」として当該行為をしたことを要する。
重要事実
被告人Aは、公共資金の支援を受けない形態で神道を弘布したとして、神道指令違反に問われた。また、県視学官B及び学務課長Cは、神社関係の建物と目される会場で開催された文化振興会主催の展覧会終了式に、公的資格で来賓出席した。Bは式上で祝辞も述べた。原審は、BCが当該展覧会と神社に関連があることに疑念を抱きながら出席したことをもって、神道指令が禁じる官公吏による神道支援にあたるとし、Aらを有罪とした。
あてはめ
1. 被告人Aについて:神道指令1のhは、公共資金の支援を受ける教育機関による弘布を禁じているが、Aの行為はこれに該当しない。同指令4の「個人的責任」規定は、規定の趣旨を類推して処罰する根拠にはならない。 2. 被告人B・Cについて:官公吏による神道支援が成立するには、具体的な支援等の認識を要する。原審は、神社と展覧会の「関連に疑いを持っていた」事実は認定したが、神社の宮司であるAによる神道弘布の意図を認識していたことや、展覧会が神道弘布に資する具体的な事情については説示していない。したがって、単に関連の疑いがある場に出席したのみでは、指令1のaの禁止行為(神道の支援・弘布)をしたとは認められない。
結論
原判決中、被告人等に関する部分を破棄する。被告人等は、いずれも無罪。
実務上の射程
罪刑法定主義の観点から、占領下の勅令・指令であっても類推解釈による処罰を否定した点に意義がある。また、公務員の宗教的活動が問われる場面において、単なる「疑念」や「関連性」では足りず、具体的な「公務性」と「宗教的活動への認識」を厳格に要求する判断枠組みとして、政教分離に関する答案での「目的効果基準」以前の過渡期的判例として参照し得る。
事件番号: 昭和23(れ)904 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二二年六月二七日から同年八月二五日までの間において行われた連合国占領軍の財産を不法に所持した行為は、昭和二一年勅令第三一一号第二条第三項、第四条を適用して処断すべきである。 二 證人申請の採否も原審の自由裁量に屬すること言うまでもないから、原審がそれを採用しなかつたからとて、憲法第三七條第一項の公平な裁判所の裁…
事件番号: 昭和25(あ)1209 / 裁判年月日: 昭和26年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で量定された実刑は、被告人にとって過重に感じられたとしても「残虐な刑罰」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は昭和21年勅令311号(連合国軍関係事項)違反の罪に問われ…
事件番号: 昭和26(あ)1517 / 裁判年月日: 昭和26年10月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】ポツダム宣言の受諾に伴い発せられたいわゆるポツダム勅令(昭和20年勅令第542号等)は、憲法に適合し、有効である。 第1 事案の概要:被告人は、昭和20年勅令第542号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件)及び昭和21年勅令第311号(連合国軍総司令官の要請に基づく命令の実施等に関する件…
事件番号: 昭和23(れ)1297 / 裁判年月日: 昭和23年11月4日 / 結論: 破棄差戻
一 昭和二二年政令第六二號(教職員の除去、就職禁止等に關する政令)第七條は單なる注意的、訓示的の警戒規定ではなく、之に對する違反行爲は、昭和二一年勅令第三一一號(聯合國占領軍の占領目的に有害な行爲に對する處罰等に關する勅令)第四條第一項に依り處罰されるものである。 二 昭和二一年勅令第三一一號の罰則を以て常に昭和二二年…