一 一九四六年二月一九日附覺書第二項Cは昭和二二年六月二七日附修正覺書を以て削除され、當該行爲に對する日本裁判所の刑事裁判權の行使の制限は解除されると共に同指令第二項の違反行爲は、同日より右司令第四項竝びに昭和二一年勅令第三一一號第四條第三項に基き日本政府が法律規定を修正して、特別の法令を發する迄は(その特別法令は昭和二二年八月二五日公布施行された政令第一六五號及び第一六六號である)前記勅令第三一一號第二條第三項にいわゆる「連合國最高司令官の日本帝國政府に對する司令の趣旨に反する行爲」であつて、同令第四條の「占領目的に有害な行爲をした者」に該當するものといわなければならない。 二 本件の不法所持は昭和二二年六月二七日附修正覺書(昭和二二年八月二五日政令第一六六號)が發せられた後にその趣旨に反して行われたものであつて昭和二一年勅令第三一一號第二條第三項により占領目的に有害な行爲である。そして、右第一條は、單に公訴の提起を制限するに過ぎないもので、既に成立した不法所持の罪に對する公訴權を失わしめるものではないから、公訴の制限が右政令第一六六號によつて削除された同年八月二五日以後においては有効に公訴を提起するを妨げないものである。
一 昭和二二年政令第一六五號公布前における占領軍財産不法所持は占領目的に有害な行爲となるか 二 昭和二二年政令第一六六號公布前におけるいわゆる占領軍財産不法所持と公訴權の存否
昭和21年勅令311號4條,昭和21年勅令311號1條4號、昭和21年勅令2條3項,昭和22年政令165號,昭和22年政令166號
判旨
占領軍の指令に基づく公訴提起の制限が解除された場合、制限解除前に行われた禁止行為であっても、解除後であれば有効に公訴を提起できる。
問題の所在(論点)
法令により公訴提起が制限されていた期間内に行われた犯罪行為について、その後に公訴制限規定が削除された場合、有効に公訴を提起できるか。
規範
連合国最高司令官の指令に反する行為は、国内法(勅令第311号)により「占領目的に有害な行為」として処罰の対象となる。特定の罪について公訴提起が制限されている場合であっても、その制限は単に公訴の実行を一時的に妨げるものに過ぎず、後の法令改正等により制限が削除されれば、それ以前に成立していた犯罪事実についても有効に公訴を提起することが可能である。
事件番号: 昭和26(あ)1601 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領下における連合国最高司令官の許可なき出国行為は、その後の法令改正により許可が不要となった場合、刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」があったものと解される。 第1 事案の概要:被告人は昭和24年12月、連合国最高司令官の許可を受けずに大阪府から沖縄へ不法に出国した。当時の法令(昭和21年勅令31…
重要事実
被告人は昭和22年7月24日および27日に、占領軍用物資である真空管を不法に所持した。当時、占領軍の覚書(刑事裁判権の行使)に基づき、同行為は勅令第311号1条4号に該当し、日本裁判所の裁判権や公訴提起に制限があった。しかし、同年6月27日の修正覚書により裁判権の制限が解除され、さらに同年8月25日の政令第166号により公訴制限の規定が削除された。検察官は同年9月16日に公訴を提起した。
あてはめ
本件の不法所持行為は、修正覚書の発せられた後にその趣旨に反して行われたものであり、勅令第311号に基づき「占領目的に有害な行為」として犯罪が成立している。公訴を制限していた同令1条4号は、昭和22年8月25日の政令により削除された。この公訴制限規定は単に手続上の制約を課すものに過ぎず、既に成立した罪に対する公訴権そのものを消滅させるものではない。したがって、制限が撤廃された後の同年9月16日に行われた本件公訴提起は、適法なものといえる。
結論
公訴制限規定の削除後であれば、制限期間中の行為であっても有効に公訴を提起できるため、本件公訴は適法である。
実務上の射程
手続的な公訴制限規定(公訴条件)の変更が、過去の行為に及ぶかという「手続法の不遡及」の例外に関する判断。実体法上の罪が成立している限り、手続的障害が解消されれば訴追可能とする理屈は、現代の公訴時効の停止・延長等の議論にも通ずる。
事件番号: 昭和25(あ)1848 / 裁判年月日: 昭和31年1月25日 / 結論: その他
一 第一審判決は、被告人らが共謀のうえ「いま福井県敦賀市では占領軍兵員により婦女子に対するにくむべき強姦がいたるところでおこなわれていて、恐怖におそわれた敦賀市民は娘をどしどし疏開させている。うんぬん」という意味の真実に符合せずかつ公安を害するおそれある事項を掲載した新聞を印刷したとの事実を認定して、昭和二一年勅令第三…
事件番号: 昭和24(れ)2776 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
仮りに、古い被告人の私物であつて、朝鮮向の貨物でないから沒収をしたのが違法であるとしても、右は判示多数の沒収品中の一点に過ぎないから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認め難い。
事件番号: 昭和27(あ)2 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領軍の目的に有害な行為を処罰する勅令は、平和条約発効により、憲法上の保障(表現の自由等)との抵触や占領目的の消滅に伴い失効したと解される。これにより、当該勅令違反の事案は、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人等は、…
事件番号: 昭和26(あ)4497 / 裁判年月日: 昭和30年6月1日 / 結論: その他
昭和二〇年九月一〇日付連合庫最高司令官の「言論及び新聞の自由」と題する覚書第三項の「連合国に対する虚偽又は破壊批評及び風説」を「論議すること」を禁止し処罰する部分についての昭和二一年勅令第三一一号「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令」違反の罪は講和条約発効後においては、刑の廃止があつたものとし…