判旨
被告人間に起訴・不起訴や没収の有無の差があっても、それが裁判所の恣意的な差別待遇でない限り、憲法14条の法の下の平等に反しない。また、憲法37条(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)は、個別の具体的事件における処理の適否を直接対象とするものではない。
問題の所在(論点)
1. 一部の共犯者が起訴されなかったり、没収の言渡しを受けなかったりすることが、憲法14条の法の下の平等に反するか。2. 具体的事件における裁判の処理の当否が、憲法37条の保障する権利に直結するか。
規範
憲法14条1項の平等原則は、事案の性質に応じた合理的な差異を許容するものであり、検察官の起訴裁量や事実認定に基づく没収の有無が直ちに違憲となるわけではない。また、憲法37条は刑事被告人の諸権利を保障する抽象的な規範であり、具体的事件における認定や手続の当否を直接争う根拠とはならない。
重要事実
被告人Aら複数が関税法違反等で起訴された事案において、被告人Aは懲役刑及び船舶等の没収を言い渡された。これに対し被告人Aは、共犯者の一部が貿易等臨時措置令違反で起訴されていないこと、また他の被告人に対して船舶等の没収が言い渡されていないことを指し、憲法14条(平等原則)及び37条(公平な裁判)に違反すると主張して上告した。なお、Aの他罪については大赦による免訴が検討された。
あてはめ
憲法14条違反の主張について、検察官が一部の被告人を起訴しなかったのは裁量の範囲内であり、裁判所が一部の被告人にのみ没収を命じたのは、それらの者に船舶・貨物の占有の事実が認められなかったという事実認定に基づくものである。したがって、裁判所が恣意的に差別待遇をした形跡は認められない。次に憲法37条については、同条は公平な裁判等の基本原則を定めたものであり、個々の具体的事件における認定や判断の適否を直接的に律するものではない。よって、本件の処理は憲法の各規定に抵触しない。
結論
被告人Aの憲法違反の主張には理由がなく、本罪については懲役1年及び没収が維持される(ただし、一部事由については大赦により免訴)。
事件番号: 昭和25(あ)2864 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反、およびそれらの幇助行為が、いずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合には、刑法54条1項前段により観念的競合として処理すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年6月、正規の引揚船ではない発動機船に乗船して鹿児島県から佐賀県へ上陸し、不法に入国した。その…
実務上の射程
刑事訴追における検察官の裁量(起訴便宜主義)や、証拠に基づく裁判所の個別的な認定・量刑の差異が、直ちに平等権侵害とはならないことを示す。憲法37条を具体的妥当性の争点とする主張を排斥する際のリファレンスとして機能する。
事件番号: 昭和26(あ)2145 / 裁判年月日: 昭和28年2月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所が採証法上の誤り、法の適用、あるいは事実認定の誤りを犯さないことを保証する趣旨ではない。 第1 事案の概要:被告人は不法出国罪、不法出国幇助罪、および関税法違反(密輸幇助)の罪で起訴され、第一審および控訴審で有罪判決を受けた。被告人側は、上…
事件番号: 昭和26(あ)161 / 裁判年月日: 昭和27年10月10日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】判決において証拠と事実は必ずしも一対一で対応して説明される必要はなく、判示全体として犯罪事実が合理的に認定されていれば足りる。 第1 事案の概要:被告人は臨時物資需給調整法違反、貿易等臨時措置令違反、および関税法違反の罪に問われた。上告審の継続中に大赦令(昭和27年政令第117号)が公布され、臨時…
事件番号: 昭和26(あ)3100 / 裁判年月日: 昭和33年3月5日 / 結論: 破棄自判
一 旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第八三条第三項は、共に起訴された共犯者の一人または数人がその物の所有者であることが明らかである場合には、必ずしも、右共犯者全員のそれぞれに対し、各独立して物の原価全額の追徴を命じなければならぬものと解すべきではなく、その物の所有者たる被告人のみに対して追徴を命ずる…
事件番号: 昭和25(あ)1856 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: 棄却
昭和二一年勅令第三一一号聯合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令第一条第八号にいわゆる「前各号の行為」中には同条第一号の聯合国人の犯した罪は含まれない。