一 旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第八三条第三項は、共に起訴された共犯者の一人または数人がその物の所有者であることが明らかである場合には、必ずしも、右共犯者全員のそれぞれに対し、各独立して物の原価全額の追徴を命じなければならぬものと解すべきではなく、その物の所有者たる被告人のみに対して追徴を命ずることも、許すと解するを相当とする。そして右条項を以上のように解しても同条項は憲法第一四条に違反しない。 二 犯人の占有にかかる密輸出入行為の用に供した船舶が、裁判官の差押令状に基いて差し押えられ、その後検察官の刑訴第二二二条第一二二条に基く換価処分により公売処分に附せられた結果、他人に競落されたとしても、没収の関係においては、これによつて犯人の右船舶に対する占有は失われるものではない。
一 旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第八三条第三項の意義と憲法第一四条 二 密輸出入行為の用に供した船舶の換価処分と犯人の占有
旧関税法(明治32年法律61号―昭和29年法律61号による改定前のもの)83条1項,旧関税法(明治32年法律61号―昭和29年法律61号による改定前のもの)83条2項,旧関税法(明治32年法律61号―昭和29年法律61号による改定前のもの)83条3項,憲法14条,刑訴法122条,刑訴法222条,刑法19条
判旨
共犯者のいる密輸出入等において、没収に代わる追徴を命じる際、その物の所有者である被告人のみに全額の追徴を命じることは、追徴制度の本旨に照らし適法であり、憲法14条にも反しない。
問題の所在(論点)
数人の共犯者がいる関税法違反の事案において、物件の所有者である特定の被告人のみに対して追徴を命じることは、関税法(旧法83条3項)の解釈として適法か。また、それが憲法14条1項に違反しないか。
規範
没収に代わる追徴は、没収しえない物の価額を徴収する制度である。その性質上、数人の被告人に対しそれぞれ追徴を命じる場合であっても、国が二重に利得することは許されず、一人の被告人が納付した限度で他の被告人の義務も消滅する。したがって、特定の共犯者が当該物件の所有者である場合には、必ずしも共犯者全員に追徴を命じる必要はなく、所有者である被告人のみに追徴を命じることも、追徴制度の本旨に適合する合理的範囲内の裁量として許容される。
事件番号: 昭和27(あ)2991 / 裁判年月日: 昭和33年6月2日 / 結論: 破棄自判
旧関税法(昭和二三年法律第一〇七号により改正のもの)第八三条第三項は、犯行時において犯人の所有又は占有に属し、そのままの状態が裁判時まで続いていたとすれば、没収できる物が、犯行後譲渡、消費等の事由で没収することができなくなつたとき、その物の原価又は価額を追徴することを定めたもので、その物の原価又は価額を追徴するためには…
重要事実
被告人Aは、共犯者らと共謀して貨物の密輸出入を計画・実施した。本件貨物は被告人Aが自己の資金で購入・交換した所有物であったが、原審および第一審は、共犯者がいたにもかかわらず、被告人Aに対してのみ没収不能な貨物の価額全額の追徴を命じた。弁護人は、関税法の規定上「犯人より追徴す」とある以上、共犯者全員からそれぞれ追徴すべきであり、所有者のみに命じるのは法解釈を誤り憲法14条の平等原則に反すると主張して上告した。
あてはめ
まず、追徴の本旨に鑑みれば、国が没収すべき物の価額を超えて二重に追徴を行うことはできない。本件では、証拠によれば密輸貨物は被告人Aが自己の金員で買い受けた所有物であることが明らかである。そうであれば、物件に対する実質的な利得者である所有者Aに対してのみ追徴を命じることは、没収の代替的機能を果たす上で合理的である。共犯者の一部が追徴を免れ、被告人Aのみが命じられたとしても、それは制度の趣旨に照らした合理的な差異であり、平等原則に反する不当な不利益とはいえない。
結論
本件貨物の所有者である被告人Aのみに追徴を命じた判断は適法であり、憲法14条1項に違反しない。
実務上の射程
共犯事件における追徴の相対的性質を認めた判例。所有者が判明している場合はその者に全額を課せば足りる。ただし、判例の趣旨(大判昭3.2.3等)を前提とすれば、共犯者全員に全額(重複徴収不可の条件付)を命じることも可能であり、実務上は執行の確実性を考慮して選択される。答案上は、追徴が「利得の剥奪」や「没収の不能を補う」性質を持つことから、柔軟な帰属決定が可能である旨の根拠として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)4097 / 裁判年月日: 昭和27年10月10日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人間に起訴・不起訴や没収の有無の差があっても、それが裁判所の恣意的な差別待遇でない限り、憲法14条の法の下の平等に反しない。また、憲法37条(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)は、個別の具体的事件における処理の適否を直接対象とするものではない。 第1 事案の概要:被告人Aら複数が関税法…
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。
事件番号: 昭和25(あ)2864 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反、およびそれらの幇助行為が、いずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合には、刑法54条1項前段により観念的競合として処理すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年6月、正規の引揚船ではない発動機船に乗船して鹿児島県から佐賀県へ上陸し、不法に入国した。その…
事件番号: 昭和26(あ)2145 / 裁判年月日: 昭和28年2月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所が採証法上の誤り、法の適用、あるいは事実認定の誤りを犯さないことを保証する趣旨ではない。 第1 事案の概要:被告人は不法出国罪、不法出国幇助罪、および関税法違反(密輸幇助)の罪で起訴され、第一審および控訴審で有罪判決を受けた。被告人側は、上…