旧関税法(昭和二三年法律第一〇七号により改正のもの)第八三条第三項は、犯行時において犯人の所有又は占有に属し、そのままの状態が裁判時まで続いていたとすれば、没収できる物が、犯行後譲渡、消費等の事由で没収することができなくなつたとき、その物の原価又は価額を追徴することを定めたもので、その物の原価又は価額を追徴するためには、その物が裁判時において犯人の所有又は占有に属していることを要しない
旧関税法(昭和二三年法律第一〇七号により改正のもの)第八三条第三項の追徴と、没収すべきものが裁判時において犯人の所有又は占有に属することの要否
旧関税法(昭和23年法律107号により改正のもの)83条1項,旧関税法(昭和23年法律107号により改正のもの)83条2項,旧関税法(昭和23年法律107号により改正のもの)83条3項
判旨
追徴の目的は没収不能な物件の価値を剥奪することにあり、裁判時において被告人の所有・占有に属していることは要しない。犯行時に被告人が占有していた物件を消費や譲渡等により没収できなくなった場合には、その価格又は原価を追徴することができる。
問題の所在(論点)
没収すべき物を犯人が消費・譲渡した際に行われる追徴の要件として、対象物件が裁判時において犯人の所有または占有に属している必要があるか。すなわち、旧関税法83条3項の「没収することができないとき」の意義が問題となる。
規範
関税法における追徴(旧関税法83条3項)は、本来没収すべき物を犯人が消費・譲渡等したために没収不能となった場合に、その価格等を徴収する制度である。したがって、追徴の要件として、対象物件が裁判時において犯人の所有または占有に属している必要はない。犯行時に犯人の所有または占有に属し、その後の事由により没収が不可能となった場合には追徴が可能となる。
重要事実
事件番号: 昭和26(あ)3100 / 裁判年月日: 昭和33年3月5日 / 結論: 破棄自判
一 旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第八三条第三項は、共に起訴された共犯者の一人または数人がその物の所有者であることが明らかである場合には、必ずしも、右共犯者全員のそれぞれに対し、各独立して物の原価全額の追徴を命じなければならぬものと解すべきではなく、その物の所有者たる被告人のみに対して追徴を命ずる…
被告人は、関税法違反(密輸出)の罪を犯し、その犯行に際して貨物を占有していた。しかし、当該貨物はその後の譲渡、消費等の事由により、裁判時において被告人の占有下に存在せず、物理的に没収することができない状態となっていた。第一審及び原審は、この事実に基づき追徴を命じたが、弁護人は裁判時に占有を有しない物について追徴することはできないと主張して上告した。
あてはめ
旧関税法83条3項の趣旨は、没収すべき物件の逸失に伴い、その対価的利益を剥奪することにある。本件において、被告人は密輸出を図った貨物を犯行時に占有していたことが確定している。その後、譲渡や消費によって没収が不可能となったことは、まさに同条項が予定する「没収することができないとき」に該当する。裁判時における現存占有を要件とすることは、犯人が物件を処分することで追徴を免れることを許容する結果となり、制度の趣旨に反する。したがって、裁判時に占有がなくても追徴は適法である。
結論
追徴をするにあたり、対象物件が裁判時に犯人の所有または占有に属している必要はない。したがって、被告人から貨物の原価相当額を追徴した原判決の判断は正当である。
実務上の射程
没収・追徴の一般法である刑法19条、19条の2の解釈においても同様の論理が適用される。犯人が没収を免れる目的で第三者に譲渡した場合などの「没収不能」事由を広くカバーする判例として、刑法各論(特に関税法や薬物犯罪)の答案において追徴の可否を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。
事件番号: 昭和25(あ)2864 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反、およびそれらの幇助行為が、いずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合には、刑法54条1項前段により観念的競合として処理すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年6月、正規の引揚船ではない発動機船に乗船して鹿児島県から佐賀県へ上陸し、不法に入国した。その…
事件番号: 昭和24(れ)2776 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
仮りに、古い被告人の私物であつて、朝鮮向の貨物でないから沒収をしたのが違法であるとしても、右は判示多数の沒収品中の一点に過ぎないから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認め難い。