一 北緯二九度以南、同二七度以北の南西諸島が外国とみなされていた当時、免許を受けないで、同地域から貨物を輸入しまたはその貨物を故買、牙保した罪について、その後右地域が外国とみなされなくなつた場合は、犯罪後の法令により刑が廃止されるものと解すべきである。 二 旧関税(昭和二九年法律第六一号による改正前の関税法をいう。)第八三条第一項による第三者所有物の没収が違憲である場合には、同条第三項によるその没収に代わる追徴を言渡すこともまた許されない。
一 外国とみなされていた地域から貨物の無免許輸入等の罪と右地域が外国とみなされなくなつたことによる刑の廃止の有無 二 第三者所有物の没収の違憲と旧関税法第八三条第三項による追徴の適否
旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)76条,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)76条の二,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)104条,旧関税法(明治32年法律61号・昭和26年11月29日法律271号により改正されたもの)104条,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)第76条,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)第83条,関税法104条,関税法関税定率法12条及び噸税法第8条の規定に基き附属島しょを定める等の省令(昭和24年5月26日大蔵省令36号)1条,関税定率法及び噸税法の適用上外国とみなされる地域を定ける政令(昭和27年4月7日政令第99号),奄美群島の復帰に伴う国税関係法令の適用の暫定措置等に関する政令(昭和28年12月24日政令407号)附則8項,刑法6条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号,刑訴法411条1号,憲法29条,憲法31条
判旨
被告人以外の第三者の所有物を没収する場合において、当該所有者に対し告知、弁解、防御の機会を与える規定を設けていない法条に基づく没収は、憲法31条および29条に違反する。また、没収自体が憲法上許されない場合には、その没収に代わる追徴をすることも許されない。
問題の所在(論点)
被告人以外の第三者の所有物を没収する際、当該第三者に防御の機会を与えないまま没収を命じる規定は憲法31条・29条に違反するか。また、その場合に没収に代わる追徴を命じることは可能か。
規範
憲法31条および29条は、何人も適正な法律の手続によらなければその財産権を奪われないことを保障している。したがって、没収の対象が被告人以外の第三者の所有に属する場合において、当該所有者に対し、没収の告知をなし、弁解および防御の機会を与えるべき旨の規定を設けていない法律に基づき没収の言渡しをすることは、適正手続の保障に反し許されない。加えて、前提となる没収自体が右の理由により憲法上許されない場合には、没収不能を理由とする追徴もまた許容されない。
重要事実
被告人A、B、Cは、雑貨類の密輸出(旧関税法違反)を行った。原審は、当該犯罪行為に供された船舶「P丸」を旧関税法83条1項・2項に基づき被告人らから没収し、また没収不能な貨物については同条3項に基づきその原価を追徴する旨を言い渡した。しかし、記録によれば、船舶「P丸」および密輸出貨物は、いずれも被告人ら以外の第三者の所有に属するものであった。当時の旧関税法等には、これら第三者に対して没収に関する告知や防御の機会を与える手続規定が存在しなかった。
あてはめ
本件における船舶および貨物は第三者の所有物である。旧関税法83条は、第三者の所有物件の没収につき、所有者に対する告知や防御の機会を設けていない。このような適正手続を欠いた状態での没収は、第三者の財産権を不当に侵害するものであり、憲法31条および29条に違反すると評価される。そして、追徴は没収の代替的性質を有するものであるから、前提となる没収自体が憲法上否定される以上、その価格を被告人らから徴収する追徴も論理的に認められない。
結論
第三者の所有物に対し適正手続なしに没収を認める規定、およびそれに基づく没収・追徴は憲法違反であり、原判決の没収および追徴の言渡しは破棄を免れない。
実務上の射程
第三者没収の違憲性を正面から認めた重要判例。答案上は、(1)適正手続の保障(31条)が財産権剥奪にも及ぶこと、(2)被告人が第三者の権利侵害を理由として違憲主張をなし得ること、(3)没収が違憲な場合は追徴も不可となること、の3点において活用する。刑事訴訟法における第三者没収手続(特例法)の制定根拠となった事案である。
事件番号: 昭和28(あ)4660 / 裁判年月日: 昭和37年12月12日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】第三者の所有物を没収する場合において、当該第三者に対し告知・弁解・防御の機会を与える規定を欠いたまま没収することは、憲法31条および29条に違反する。したがって、適正手続を欠く第三者所有物の没収を認めた規定に基づく判決は破棄を免れない。 第1 事案の概要:被告人らは、漁船E丸を用いて貨物の密輸出(…