昭和二一年勅令第三一一号聯合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令第一条第八号にいわゆる「前各号の行為」中には同条第一号の聯合国人の犯した罪は含まれない。
昭和二一年勅令第三一一号第一条第八号にいわゆる「前各号の行為」中には、同条第一号の聯合国人の犯した罪も含まれるか
昭和21年勅令311号1条1号,昭和21年勅令311号1条8号
判旨
連合国人と共謀した日本人による犯罪について、当時の勅令三一一号一条の解釈に基づき、日本人が日本の裁判権に服することを肯定した。
問題の所在(論点)
連合国人と共謀して犯罪を実行した日本人に対し、当時の法制下において日本の裁判権が及ぶか。特に、連合国人の犯罪を日本の裁判権から除外していた勅令311号1条の解釈が問題となった。
規範
昭和21年2月19日付「刑事裁判権の行使に関する連合国最高司令官の覚書」および勅令311号1条の規定に照らし、同条8号にいう「前各号の行為」には同条1号の連合国人の犯した罪は含まれない。したがって、連合国人の犯した罪と共犯関係にある日本人は、依然として日本の裁判権に服する。
重要事実
被告人らは中国人A等と共謀し、不法輸出の罪を犯した。弁護人は、連合国人である中国人との共謀事犯であることから、勅令311号に基づき日本の裁判権が及ばず、公訴の提起および受理は不法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和26(あ)4097 / 裁判年月日: 昭和27年10月10日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人間に起訴・不起訴や没収の有無の差があっても、それが裁判所の恣意的な差別待遇でない限り、憲法14条の法の下の平等に反しない。また、憲法37条(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)は、個別の具体的事件における処理の適否を直接対象とするものではない。 第1 事案の概要:被告人Aら複数が関税法…
あてはめ
勅令311号1条各号を、その基本指令である連合国最高司令官の覚書と対照して検討すると、同条8号が規定する制限対象に、1号が定める連合国人の罪は含まれないと解するのが相当である。本件において、被告人らが中国人A等と共謀して事犯に及んだとしても、日本人である被告人らは日本の裁判権から除外される根拠はなく、依然として日本の刑事裁判権に服しているといえる。
結論
連合国人と共犯関係にある日本人について日本の裁判権を認めた原判決の判断は正当であり、公訴の提起等は不法ではない。
実務上の射程
占領下における特殊な裁判権の存否に関する判例であり、現在の実務上の重要性は乏しいが、共犯者の一部が裁判権を免れる場合であっても、他の日本人の裁判権は当然には否定されないという論理構成において参照しうる。
事件番号: 昭和26(れ)1337 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正犯が密輸出を企図していることを認識しながら、当該密輸出を容易にする物品の売買行為を行った場合、正犯の実行行為を容易ならしめたものとして、刑法62条1項の幇助犯が成立する。 第1 事案の概要:被告人Dは、共犯者Bらが商品を密輸出する計画を立てていることを察知していた。それにもかかわらず、DはBらに…
事件番号: 昭和25(あ)2864 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反、およびそれらの幇助行為が、いずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合には、刑法54条1項前段により観念的競合として処理すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年6月、正規の引揚船ではない発動機船に乗船して鹿児島県から佐賀県へ上陸し、不法に入国した。その…
事件番号: 昭和27(あ)3230 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法および貿易等臨時措置令の適用に関し、南西諸島奄美大島は法令により外国とみなされるため、同地域への物資の移送等は輸出入に関する規制の対象となる。 第1 事案の概要:被告人が奄美大島との間で物資の取引等を行った行為について、関税法や貿易等臨時措置令違反が問われた。上告人は、奄美大島が日本の主権下…
事件番号: 昭和27(あ)6454 / 裁判年月日: 昭和29年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実行の着手は、犯行を企図した意思が外部に現れた行為といえるか否かによって判断され、密輸出の予備行為を超え、客観的に密輸出に至る危険性が認められる行為があった場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、貨物を朝鮮へ密輸出することを企図し、互いに共謀した。被告人らは、密輸出の実現に向けて具…