特定の密輸入貨物全部の運搬保管方法依頼を受けて、その一部をある倉庫まで運搬して寄蔵し、さらに同時刻頃引続いて残りの貨物を附近の他の倉庫まで運搬して寄蔵したときは一罪を構成する。
二回に亘る密輸入貨物の運搬寄蔵行為が一罪を構成する事例
刑法45条,関税法76号ノ2
判旨
密輸入貨物の運搬寄蔵において、所有者からの一回の依頼に基づき、同一の機会に引き続いて行われた複数の運搬・寄蔵行為は、単に便宜上場所を分けたに過ぎない場合、包括して単純一罪を構成する。
問題の所在(論点)
一括の依頼に基づき、同一の機会に連続して行われた複数の運搬・寄蔵行為が、併合罪(刑法45条)となるか、あるいは包括して単純一罪となるか。
規範
同一の主観的意図に基づき、時間的・場所的に密接した状況下で連続して行われた複数の行為について、社会的見地から一個の活動と評価し得る場合には、刑法上の包括一罪(単純一罪)として扱うべきである。
重要事実
被告人Aは、貨物所有者Cから、旧陸軍倉庫に陸揚げされた密輸入貨物全部の運搬保管依頼を一括して受けた。これに基づき、同日午前2時頃から連続して、一部の貨物をE方倉庫へ、残りの貨物をF方倉庫へと、順次二回に分けて運搬し寄蔵した。原審は、客体・時・場所が異なることを理由に、これらを刑法45条前段の併合罪として加重処罰した。
事件番号: 昭和27(あ)3030 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反が同一の行為により成立する場合、両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立ち、最も重い刑により処断される。 第1 事案の概要:被告人は、輸入貨物である中双糖及び含密糖の密輸入に関連して、関税法違反および貿易等臨時措置令(後の外国為替及び外国貿易管理法)違反の罪に…
あてはめ
本件における二つの運搬寄蔵行為は、貨物所有者による「一回の依頼」を契機としており、犯行の動機・目的が共通している。また、これらは「同一の機会に引き続いて」行われており、時間的密接性も認められる。二つの倉庫に分けた点は、単に「運搬及び寄蔵の都合上」生じた形式的な差異に過ぎない。したがって、これら一連の行為は、社会的・法的評価において個別に処罰すべき独立した罪体とは認められず、全体として一個の活動、すなわち単純一罪と評価するのが相当である。
結論
被告人の行為は包括して単純一罪を構成する。併合罪として併合罪加重を行った原判決には、法令の適用の誤りがある。
実務上の射程
罪数論における「包括一罪」の典型例(行為の単数性)を示す判例である。答案上は、数個の法益侵害行為が外形的に存在しても、①単一の犯意、②時間的・場所的連続性、③行為態様の共通性がある場合に、併合罪を否定して処罰範囲を限定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)2607 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の譲渡事実であっても、それらを一個の犯罪行為として認めることができる場合には、包括一罪として訴因を特定することが可能である。 第1 事案の概要:被告人は、特定の物品につき複数回にわたる譲渡行為を行った。検察官は、これら数個の譲渡事実を個別の犯罪としてではなく、一括して一個の犯罪行為として起訴し…