一 昭和二七年法律第一五三号による改正前の国民金融公庫法は、同公庫の役職員の職務上犯した非行に対する処罰はあげてこれを刑法の律する所に委ねて居る。換言すれば、同庫の役職員に対し刑法一九七条が適用せらるべきか否かは、同公庫の役職員が刑法七条にいう公務員と解せられるか否かにかかる。同公庫の役職員は右改正前の一七条により国家公務員とされているが故に刑法一九七条の適用を受けるのではなく、それが刑法七条にいう公務員と認められるが故にその適用を受けるのである。 二 国民金融公庫の事務は刑法七条にいう「公務」に当たる。
一 国民金融公庫の役職員と刑法第七条にいう「公務員」 二 同公庫の事務と刑法第七条にいう「公務」
刑法7条,刑法197条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)1条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)2条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)3条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)18条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)28条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)21条,国民金融公庫法(昭和27年法律153号による改正前のもの)17条,国民金融公庫法(昭和27年法律153号による改正後のもの)17条,国民金融公庫法(昭和28年法律136号による改正後のもの)17条
判旨
国民金融公庫の役職員は、その法人の公的性格や業務の公共性に鑑み、刑法7条にいう「公務員」に該当する。また、特定の地位を公務員として扱うことは立法政策上の合理的な裁量に基づくものであり、憲法14条の「社会的身分」に基づく不当な差別には当たらない。
問題の所在(論点)
国民金融公庫の役職員が刑法7条の「公務員」に含まれるか。また、同役職員を国家公務員として扱い収賄罪を適用することが、憲法14条1項の「社会的身分」による差別に該当し、違憲とならないか。
規範
刑法7条にいう「公務員」とは、法令に基づいて国又は地方公共団体の事務に従事する者を指すが、国の行政機関そのものでなくても、その事務が行政の目的を達成するための公共的性格を有し、組織・運営面で国の強い監督下に置かれている公法人の役職員は、実質的に公務員としての性格を有するものとして同条の「公務員」に含まれる。また、特定の公法人の役職員に国家公務員の身分を付与し、刑罰規定を適用するか否かは立法政策上の要請により決すべき事項であり、合理的な理由がある限り憲法14条に違反しない。
重要事実
国民金融公庫(当時)の役職員であった被告人らが、その職務に関して賄賂を収受したとして、刑法197条の収賄罪で起訴された。弁護人は、改正前の国民金融公庫法17条が役職員を国家公務員と規定していた点につき、本来公務員でない者を公務員とみなして処罰することは、憲法14条(平等原則)および憲法31条に違反すると主張して上告した。同公庫は全額政府出資の公法人であり、国民大衆への事業資金供給という公共的目的を有していた。
あてはめ
国民金融公庫は、全額政府出資の公法人であり、その業務は民生安定等のための資金供給という公共的性格を有する。また、大蔵大臣の計画・指示や監督を受け、予算は国会の議決を要し、決算は会計検査院の検査に服するなど、国の行政機関に準ずる実態を備えている。このような準行政機関的性格に鑑みれば、その事務は刑法7条にいう「公務」に当たると解するのが相当である。したがって、改正前同法17条が役職員を国家公務員としたのは、実質的に公務員と認められる者に対してその地位を明認させたものに過ぎず、不当な差別の設定や擬制ではないため、憲法14条には違反しない。
結論
国民金融公庫の役職員は、刑法7条にいう公務員に該当し、その収賄行為に刑法197条を適用することは憲法14条に違反しない。
実務上の射程
特殊法人等の職員が「みなし公務員」として収賄罪の主体となる場合の合憲性・正当性を論じる際の拠り所となる。特に「社会的身分」の意義について、後天的に取得される公務員等の地位はこれに含まれないとする原審の判断を引用しつつ、立法政策による区別の合理性を強調する文脈で活用できる。
事件番号: 昭和33(あ)221 / 裁判年月日: 昭和34年12月9日 / 結論: 棄却
公務員の収賄を処罰することを定めた刑法第一九七条は、憲法第一四条に違反しない。
事件番号: 昭和37(あ)79 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
丸亀市モーターボート整備員(判文参照)は、刑法第七条の「法令ニ依リ公務ニ従事スル職員」に当る。