建設省訓令第五号「国家公務員法第五五条第二項の規定により任命権の委任に関する訓令」もまた刑法七条にいう法令のうちに含まれる。
任命権委任に関する建設省訓令と刑法第七条にいう法令
昭和24年2月15日建設省訓令5号「国家公務員法55条2項の規定により任命権の委任に関する訓令」,刑法7条
判旨
刑法7条1項の公務員とは、官制職制により職務権限が定まっている者に限らず、法令(行政内部の訓令を含む)に基づき公務に従事する職員を指す。また、形式上は単純労務を前提とする名義であっても、任命権者が実質的な公務を命じた以上、手続上の不備があっても刑法上の公務員に該当する。
問題の所在(論点)
刑法7条(現1項)にいう「法令」に、行政内部の訓令が含まれるか。また、形式上は単純労務職(人夫)として採用され、人事院の承認を欠くなど採用手続に瑕疵がある者が、実質的に担当した事務に基づき刑法上の公務員と認められるか。
規範
刑法7条(現1項)にいう「法令により公務に従事する職員」とは、官制職制によって職務権限が定まっている者に限らず、すべて法令によって公務に従事する職員を指称する。ここにいう「法令」には、単に行政内部の組織作用を定めた訓令であっても、抽象的な通則を規定しているものは包含される。また、人事院規則等の手続上の承認を得ていない瑕疵がある場合でも、任命権者が実質的な公務を命じ、現実に公務を担当している以上、その事務は法令に基づくものと解される。
重要事実
建設省関東地方建設局に「人夫名義」の職員として採用された被告人が、上司の命により、企画係として物品購入、電力設備の設計・施工・監督、及び変電所建設工事の監督事務に従事していた。これらの事務は「技術補佐員」としての公務に相当するものであったが、採用にあたり人事院規則に基づく承認を得ていなかった。被告人は、当該事務に関連して収賄罪(刑法197条)に問われたが、自身が刑法上の公務員に該当するかを争った。
あてはめ
まず、被告人の採用根拠である建設省訓令は、国家公務員法に基づき任命権の委任を定めた抽象的通則であり、刑法上の「法令」に含まれる。次に、被告人が現実に担当していた設計・監督等の事務は、単なる機械的・肉体的労務(事実上の事務)ではなく、公務としての実質を有する。任命権者である地方建設局長が、人事院の承認を得ずに技術補佐員としての事務を命じた手続上の瑕疵は、被告人が現実に法令に基づき公務を担当しているという事実を左右しない。したがって、被告人は法令に基づき公務に従事する職員といえる。
結論
被告人は刑法7条(現1項)にいう公務員に該当し、収賄罪が成立する。
実務上の射程
公務員該当性の判断において「法令」を広く解し、内部訓令や実質的な事務分担も根拠になり得ることを示した。形式的な職名や採用手続の適否よりも、任命権者による具体的な職務命令と現実に担当した事務の性質を重視する実質的判断の手法として、贈収賄罪等の職務犯罪において広く参照される。
事件番号: 昭和37(あ)79 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
丸亀市モーターボート整備員(判文参照)は、刑法第七条の「法令ニ依リ公務ニ従事スル職員」に当る。