一 刑法第七条にいう「法令により公務に従事する職員」とは、公務に従事する職員で、その公務に従事することが法令の根拠にもとずくものを意味し、単純な機械的、肉体的労務に従事するものはこれに含まれないけれども、当該職制等のうえで「職員」と呼ばれている身分をもつかどうかは、あえて問うところではない。 二 特別調達庁第一六条により制定された特別調達庁職制にもとずいて任用され、同庁支局契約部工事課員として占領軍関係工事につき工事請負業者に工事代金の支払をするについて契約稟議書面の起案および支払請求書の内訳書の作成処理等の事務を担当していた雇員は、刑法第七条にいう「公務員」にあたる。
一 刑法第七条にいう「法令により公務に従事する職員」の意義 二 特別調達庁の雇員と刑法第七条にいう「公務員」
刑法7条,特別調達庁法14条,特別調著庁法16条,特別調達庁職制30条(昭和23年7月1日の改正で32条となる)
判旨
刑法7条にいう「法令により公務に従事する職員」とは、法令の根拠に基づき、単純な機械的・肉体的労務ではない公務に従事する者を指し、組織上の正式な「職員」という身分の有無を問わない。国の行政機関に準ずる法人の「雇員」であっても、契約稟議の起案等の事務を担当していれば公務員に該当する。
問題の所在(論点)
刑法上の公務員(7条)の意義。特に、国の行政機関そのものではない法人の「雇員」として、契約事務の起案等の事務に従事する者が「法令により公務に従事する職員」に該当するか。
規範
刑法7条に規定される「法令により公務に従事する職員」とは、その公務に従事することが法令の根拠に基づく者をいう。ただし、単純な機械的・肉体的労務に従事する者はこれに含まれない。また、当該職制等において「職員」という呼称・身分を有するか否かは問わない。さらに、従事する事務が「公務」といえるためには、当該機関が国の行政機関そのものでなくても、その目的・機構に照らし国の行政機関に準ずるものであれば足りる。
重要事実
特別調達庁は、特別調達庁法に基づき設立された法人で、内閣総理大臣の監督下で連合国等の需要する物資調達等の業務を行う、国の行政機関に準ずる性格を有していた。被告人は、同庁の支局において、職制上「職員」ではなく「雇員」として任用されていた。被告人の具体的業務は、工事請負業者への代金支払に関し、契約稟議書面の起案(出議)および支払請求書の内訳書の作成処理等を行うものであった。
あてはめ
まず、特別調達庁は国の行政機関に準ずるものと認められ、その事務は「公務」にあたる。次に、被告人は「雇員」であり職制上の「職員」ではないが、法令(特別調達庁職制)に基づき任用されているため、法令の根拠がある。そして、その担当事務は契約稟議の起案や内訳書の作成処理であり、単なる機械的・肉体的労務とは認められない。したがって、被告人は公務に従事する職員としての実質を備えているといえる。
結論
被告人は刑法7条にいう公務員にあたる。したがって、公務員を主体とする犯罪の成否において、被告人の公務員性が肯定される。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「準公務員」の解釈指針を示す。形式的な身分よりも、①事務の公務性(行政機関準拠性)、②従事の法令根拠、③事務の質(非肉体的・非機械的)という実質的要素を重視する。司法試験では収賄罪や公務員職権濫用罪等の主体が問題となる場面で、外郭団体の職員等の公務員性を論じる際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)3008 / 裁判年月日: 昭和25年3月24日 / 結論: 棄却
被告人は、廣島財務局長の通牒によつて權限を授與された松江税務署長の任命權に基づいて同署雇に任用せられたものである。右財務局長が税務署長に對し右の如き授權をする權限のあることは法令上明らかであるから同被告人は、法令に基いて任命された税務署の職員であることは明瞭である。しかして原判決の確定するところによれば、同被告人は昭和…
事件番号: 昭和37(あ)79 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
丸亀市モーターボート整備員(判文参照)は、刑法第七条の「法令ニ依リ公務ニ従事スル職員」に当る。