判旨
不認可両替業務と、その対象とは別個の軍票を対象とする不寄託行為との関係について、刑法54条1項の観念的競合または牽連犯は成立せず、併合罪となると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
不認可両替業務と不寄託行為が、刑法54条1項前段(観念的競合)または同項後段(牽連犯)の関係に立ち、科刑上一罪として扱われるべきか、それとも併合罪となるべきかが問題となった。
規範
刑法54条1項の「一個の行為が二個以上の罪名に触れるとき」(観念的競合)または「犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れるとき」(牽連犯)にあたるか否かは、各罪の構成要件となる行為の重なり合いや、手段・結果としての密接な関連性の有無によって判断される。対象物が別個であり、行為が独立している場合には、原則として科刑上一罪とはならない。
重要事実
被告人は、不認可の両替業務(外国為替及び外国貿易管理法違反)を行い、その対象たる軍票は2万6700ドルであった。一方で、被告人は別途34ドルの軍票についての不寄託行為(同法違反)も行っていた。原判決はこの両行為が別個の物を対象としており、不寄託行為の対象(34ドル)は両替業務の対象(2万6700ドル)に含まれていないと認定した。
あてはめ
本件では、不認可両替業務の対象である軍票(2万6700ドル)と、不寄託行為の対象である軍票(34ドル)は物理的に別個の物である。後者は前者に含まれておらず、それぞれの行為は独立した客体に対して行われている。したがって、一方の行為が他方の行為と重なり合う「一個の行為」とはいえず、また一方が他方の手段・結果の関係にあるともいえない。客体の別個性が認められる以上、各罪は独立して成立し、科刑上一罪の関係にあるとは認められない。
結論
本件の不寄託行為と両替業務は、刑法54条1項の適用を受ける関係にはなく、併合罪として処理されるべきである。
事件番号: 昭和39(あ)1295 / 裁判年月日: 昭和40年11月26日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法二七条第一項第三号違反の罪と同法第四八条第一項に基づく命令に違反する罪とは、牽連犯ではない。
実務上の射程
同一法条(外為法)違反の数罪が問題となる場面でも、行為の客体が別個であり、一方が他方に包含されない場合には、観念的競合や牽連犯を否定して併合罪とする実務上の判断基準を示している。答案上は、罪数判断において「行為の同一性」や「手段・結果の関連性」を検討する際、客体の同一性の有無をメルクマールとして活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2478 / 裁判年月日: 昭和27年11月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不承認での輸出入行為と無免許での輸出入行為が同時に行われた場合、それらは一個の行為で数個の罪名に触れるものとして、刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立つ。 第1 事案の概要:被告人は、機帆船を用いて黒糖や石油、粉乳等の貨物を、主務大臣の承認を得ることなく、かつ税関長の免許を受けることなく輸出入…
事件番号: 昭和33(あ)1248 / 裁判年月日: 昭和34年2月5日 / 結論: 棄却
本邦入国者が、入国に際し、別送して輸入しようとする自動車は、それが入国者の出発地または経由地において積み出されたものでないかぎり、輸入貿易管理令(昭和三一年一一月一四日政令第三四二号による改正前のもの)第一四条第二号別表第二にいわゆる「携帯品」と認めることはできない。
事件番号: 昭和33(あ)434 / 裁判年月日: 昭和33年9月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】輸出貿易管理令の複数の号に該当する承認違反行為において、その一部の根拠規定が法改正等により適用を誤ったとしても、他の号に該当する無承認輸出の事実が認められる限り、罰則の適用は正当であり、判決の破棄を要しない。 第1 事案の概要:被告人は、絹及び人絹交織シホン・ベルベツチン、ならびにマニラ・ロープを…
事件番号: 昭和38(あ)1801 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
一 外国為替及び外国貿易管理法第七三条は、事業主たる法人の代表者でない従業者の違反行為につき、当該法人に右行為者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく、事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業主もまた刑責を免れないとする法意である…