判旨
輸出貿易管理令の複数の号に該当する承認違反行為において、その一部の根拠規定が法改正等により適用を誤ったとしても、他の号に該当する無承認輸出の事実が認められる限り、罰則の適用は正当であり、判決の破棄を要しない。
問題の所在(論点)
政令改正により、原判決が処罰の根拠とした輸出貿易管理令1条1項1号(別表第一)の適用に誤りが生じた場合であっても、他の号(2号・3号)の要件を充足する限り、外為法違反の罪は成立するか。
規範
輸出貿易管理令1条1項各号は、貨物の種類(1号)、取引の態様(2号)、決済方法(3号)等、異なる観点から輸出の承認義務を課している。これらはいずれも外国為替及び外国貿易管理法(外為法)48条1項に基づく制限であり、同条及び罰則規定(同法70条22号)の適用において、いずれか一の号の規定に違反する所為があれば、処罰の根拠として足りる。
重要事実
被告人は、絹及び人絹交織シホン・ベルベツチン、ならびにマニラ・ロープを北鮮へ輸出した。原判決は、これらの貨物が輸出貿易管理令別表第一(1号:特定の種類の貨物)に該当することを前提に、無承認輸出として有罪とした。しかし、上告審までに政令改正が行われ、当該貨物の一部が別表から削除、あるいは名称変更されていた。一方で、本件取引は「求償貿易契約(2号)」かつ「標準外決済方法(3号)」に該当し、通商産業大臣の承認を受けていない事実も証拠により認められていた。
あてはめ
本件貨物のうち、絹織物等の品目が別表第一から削除・変更されたとしても、当該輸出行為は依然として「求償貿易契約(2号)」および「標準外決済方法(3号)」に基づくものとして、同令1条1項の承認を要する。証拠によれば、被告人はこれらについても通商産業大臣の書面による承認を得ていない。したがって、原判決が1号の適用のみを論じて法改正後の事実誤認を含んでいたとしても、2号・3号違反という他の独立した処罰根拠が存在する以上、有罪の結論に変わりはなく、判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
結論
外為法違反の罪が成立する。複数の規制規定に重畳的に該当する行為において、一部の根拠に瑕疵があっても、他の根拠規定により違反が認められるならば有罪は維持される。
事件番号: 昭和38(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のた…
実務上の射程
行政法規の改正が刑事責任に及ぼす影響(法令改廃と刑法6条)が問題となる場面で、一つの行為が複数の規制要件(本件では外為法の委任に基づく政令の各号)に該当する場合、一部の要件が消滅しても他の要件を充たす限り処罰が可能であることを示す。実務上は、訴因の特定や罰則の適用範囲を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和31(あ)338 / 裁判年月日: 昭和33年7月31日 / 結論: 棄却
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令(昭和二七年政令第一二七号)第四条の性格は、外国為替及び外国貿易管理法第二一条の委任命令に外ならず、右政令の効力は安全保障条約ないし行政協定の効力如何によつて左右されるものと解すべきではない。
事件番号: 昭和36(あ)1186 / 裁判年月日: 昭和37年7月13日 / 結論: その他
外国為替及び外国貿易管理法第二六条により非居住者に対する債権を取り立てる場合、標準決済方法によることは、同条の要求するところではなく、外国為替管理例第一〇条第一項が標準決済方法によるべきことを定めているのは、同法第二六条の委任によらないもので、罰則を伴う義務を定めたものではない。
事件番号: 昭和33(あ)1248 / 裁判年月日: 昭和34年2月5日 / 結論: 棄却
本邦入国者が、入国に際し、別送して輸入しようとする自動車は、それが入国者の出発地または経由地において積み出されたものでないかぎり、輸入貿易管理令(昭和三一年一一月一四日政令第三四二号による改正前のもの)第一四条第二号別表第二にいわゆる「携帯品」と認めることはできない。
事件番号: 昭和39(あ)1295 / 裁判年月日: 昭和40年11月26日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法二七条第一項第三号違反の罪と同法第四八条第一項に基づく命令に違反する罪とは、牽連犯ではない。