外国為替及び外国貿易管理法第二六条により非居住者に対する債権を取り立てる場合、標準決済方法によることは、同条の要求するところではなく、外国為替管理例第一〇条第一項が標準決済方法によるべきことを定めているのは、同法第二六条の委任によらないもので、罰則を伴う義務を定めたものではない。
外国為替及び外国貿易管理法第二六条により非居住者に対する債権を取り立てる場合標準決済方法によることを要するか。
外国為替及び外国貿易管理法26条,外国為替及び外国貿易管理法70条7号(昭和33年5月15日法律156号による改正前のもの),外国為替管理令10条
判旨
法律が政令に対して標準決済方法による債権回収義務の創設を委任していない場合、政令で定めた当該義務に罰則を適用することはできず、これに反した事実は罪とならない。
問題の所在(論点)
外為法26条が債権の回収義務を定める一方で、標準決済方法によるべき旨の委任を政令に与えていない場合に、政令の規定に基づき標準決済方法による回収を怠った事実を罪として処罰できるか。
規範
罪刑法定主義の観点から、法律の委任に基づかない義務を政令で創設し、これに罰則を適用することは許されない。法律(本件では外為法26条)が債権の取立てを要求するにとどまり、標準決済方法によるべきことを政令に委任していない場合、政令(外為令10条1項)が定める標準決済方法による義務は、罰則を伴うものとは解されない。
重要事実
被告人Aは、D商事株式会社の業務に関し、非居住者Eに対する外貨債権を取得した。被告人は、当該債権の期限到来後、遅滞なく「標準決済方法」によりこれを取り立てなかったとして、外国為替及び外国貿易管理法(外為法)違反等で起訴された。第一審判決はこれを有罪とし、原判決もこれを支持した。
事件番号: 昭和38(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のた…
あてはめ
まず、原判決が適用した法22条は対外支払手段等の集中義務に関するものであり、本件のような債権回収義務を定めたものではない。次に、債権回収を定めた法26条を確認すると、遅滞なく債権を取り立てるべきことは要求しているが、標準決済方法によるべき旨を政令に委任する規定は存在しない。したがって、政令(外為令10条1項)が標準決済方法を定めていても、これに反したことを理由に罰則を適用することはできない。ゆえに、被告人が標準決済方法により取り立てなかった事実は、それのみでは罪とならない。
結論
被告人が標準決済方法により取り立てなかった事実は罪とならない。原判決には法令適用の誤りがあるため、被告人Aに関する部分は破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
白地刑罰法規における委任の限界(委任の範囲外での義務創設の禁止)を示す重要判例である。答案上では、政令等の下位規範に委任された罰則の適用の可否が問題となる場面で、法律の委任の有無・範囲を厳格に解釈する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)338 / 裁判年月日: 昭和33年7月31日 / 結論: 棄却
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令(昭和二七年政令第一二七号)第四条の性格は、外国為替及び外国貿易管理法第二一条の委任命令に外ならず、右政令の効力は安全保障条約ないし行政協定の効力如何によつて左右されるものと解すべきではない。
事件番号: 昭和37(あ)906 / 裁判年月日: 昭和38年12月4日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七条第二項第一号は、非居住者が同号記載の費用を支弁するため本邦通貨で支払う場合を規定したものと解すべきである(昭和三六年(あ)第二五四三号同三七年一二月一八日第三小法廷決定、刑集一六巻一二号一七〇六頁参照)。
事件番号: 昭和38(あ)1801 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
一 外国為替及び外国貿易管理法第七三条は、事業主たる法人の代表者でない従業者の違反行為につき、当該法人に右行為者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく、事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業主もまた刑責を免れないとする法意である…
事件番号: 昭和36(あ)2543 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七第二項第一号は、非居住者が同号記載の費用を支弁するため本邦通過で支払う場合を規定したものと解すべきである。