一 本件権利行使の方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱していると認むべきこと原判示のとおりである。 二 (原審の認定事実の要旨)被告人AはBに約二万円余を横領されその被害金の弁償を受けるまで同人所有家屋内の戸、障子等を担保にとつたところ、事情を知らない同人の妻Cが担保品を売却したことから躍起となつて、被告人D等と共謀し右C等に担保にとつと戸、障子を売つたからその代りに仏壇を貰つて行くと大声で怒鳴り、もしその要求が容れられないときはどうゆう危害を加えるかも知れないような態度を見せて右C等を畏怖させ、同家所有の仏壇一基を交付させた。
権利行使の方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱している事例
刑法249条
判旨
権利の行使を目的とする場合であっても、その手段が社会通念上一般に忍容すべき程度を逸脱したときは、恐喝罪等の違法性を有する。判例は、正当な権利行使と違法な恐喝行為の境界について、社会通念に基づく相当性を基準とする判断枠組みを維持している。
問題の所在(論点)
権利行使の手段として脅迫的な言動が用いられた場合、正当な権利の範囲内として違法性が阻却されるか、あるいは「社会通念上一般に忍容すべき程度」を基準に違法性が肯定されるか。
規範
権利行使を目的とする行為であっても、その方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱している場合には、恐喝罪(刑法249条)または強迫罪(222条)等の構成要件に該当し、違法性を有すると解される。
重要事実
被告人が債権回収等の権利行使を目的として行った行為に関し、原審は、その手段が社会通念上の忍容限度を超えていると判断して有罪とした。これに対し弁護人は、権利行使の目的がある以上、先行する判例の趣旨に照らして違法性が阻却される、あるいは構成要件を欠くと主張し、判例違反を理由に上告した。
事件番号: 昭和27(あ)5991 / 裁判年月日: 昭和29年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利行使の目的で恐喝手段を用いた場合でも、それが正当な権利行使の範囲を逸脱し、権利行使に仮託して財物を請求したと認められるときは、恐喝罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人らは、貨物自動車の引渡を請求するにあたり、恐喝的な手段を用いた。被告人らは正当な権利行使であることを主張したが、原審はこれが…
あてはめ
判決文によれば、被告人の権利行使の方法は「社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱している」と認定されている。本判決は、先行する判例(昭和26年6月1日判決、昭和30年10月14日判決)の趣旨を同一のものと理解した上で、原審が認定した事実関係の下では、当該手段は社会的に許容される範囲を超えた不当な強圧的手段であると評価した。
結論
被告人の行為は、権利行使の目的があるとしても、その手段が社会通念上の忍容限度を逸脱しているため、恐喝罪(または強迫・暴行を伴う罪)の成立を免れない。したがって、判例違反はなく上告は棄却される。
実務上の射程
権利行使と恐喝等の成否が問題となる事案におけるリーディングケースの一つ。答案上は、債権回収等の目的があっても「手段の相当性」が欠ければ違法であるとする規範を定立する際に引用する。特に『社会通念上一般に忍容すべき程度』という文言は、権利行使の違法性阻却の限界を示すキーワードとして重要である。
事件番号: 昭和31(あ)2899 / 裁判年月日: 昭和32年10月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利行使の手段として行われる暴行・脅迫が恐喝罪を構成するか否かは、その手段が社会通念上一般に忍容すべき限度を超えているかによって判断される。正当な権利の行使であっても、社会通念上の許容範囲を逸脱する態様で行われた場合には恐喝罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人らは、被害者が麻薬を偽物とすり替え…