判旨
教職員組合の団体行動であっても、社会通念上許容される限度を超えた不退去・監禁行為は、正当行為として違法性が阻却されることはない。
問題の所在(論点)
1. 教職員組合による団体行動の一環として行われた不退去・監禁行為について、刑法35条の正当行為が成立するか。 2. 他の参加者が起訴されていない中で、特定の者のみを起訴することが憲法14条に違反するか。
規範
労働組合等の団体行動であっても、その行為が社会通念上許容される限度を超えた場合には、刑法35条の正当行為として違法性が阻却されることはない。
重要事実
被告人らは教職員組合の団体行動の一環として、特定の場所に留まり、あるいは他者を拘束する行為を行った。その態様は不退去罪および監禁罪の構成要件に該当するものであった。被告人側は、同様の行為をした者が他にもいる中で自らのみが起訴されたことによる憲法14条違反、および正当な団体行動であることを理由に無罪を主張した。
あてはめ
本件行為は、教職員組合の団体行動という目的を持ってなされたものである。しかし、その行為態様が不退去および監禁に至っている点に鑑みれば、団体行動としての正当性を考慮したとしても、社会通念上許容される範囲を逸脱している。したがって、違法性を阻却するに足りる正当な業務行為とは認められない。また、平等権違反の主張については、共犯者の一部のみが起訴・処罰されることが直ちに差別的な法適用として憲法に反するものではない。
結論
被告人らの行為は正当行為には当たらず、不退去罪および監禁罪が成立する。また、本件の起訴が憲法14条に違反することもない。
実務上の射程
労働争議や政治活動に伴う実力行使がなされた際、刑法35条の違法性阻却事由(正当行為)の成否を検討するためのメルクマールとして「社会通念上許容される限度」という基準を提示している。また、選別的な起訴がなされた場合の憲法14条違反の主張に対する排斥根拠としても利用可能である。
事件番号: 昭和29(れ)14 / 裁判年月日: 昭和29年12月7日 / 結論: 棄却
一 原判決の認定した本件事実によれば、被告人両名は判示会社工場次長A外四名の同会社幹部に対し、寄宿舎止宿工員は一応帰郷することを勧告することなどを含む会社の通告の撤回及び団体交渉の開催方を要求した際、原審相被告人B等と共同して、同会社構内バレーコートにおいて、徹宵十数時間にわたり引続き右A等の自由を拘束して不法に監禁し…
事件番号: 昭和25(あ)3252 / 裁判年月日: 昭和28年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合の団体交渉等の行為が正当化されるのは、労働組合法所定の目的を達成するためにした正当な行為に限られる。正当な限度を逸脱した暴力行為は、いかなる場合においても許されず、憲法28条による保障の対象外である。 第1 事案の概要:被告人らは、共産党の闘争方針の一環として本件行為に及んだ。第一審および…
事件番号: 昭和42(あ)493 / 裁判年月日: 昭和42年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法上の正当な争議行為といえるためには、その手段・態様が社会通念上相当な範囲に留まる必要がある。本件では、被告人らの行為は正当性の限界を逸脱したものとして、刑事責任を免れないと判断された。 第1 事案の概要:判決文からは具体的な事実関係の詳細は不明であるが、労働組合員等である被告人らが、争議…
事件番号: 昭和42(あ)472 / 裁判年月日: 昭和43年7月12日 / 結論: 棄却
秋田県県政共闘会議を組織する労働組合の代表者である被告人甲、乙らが、秋田県知事公舎第二応接室において、知事に対し、昭和三六年度県予算に関し折衝した際、折衝が行き詰りとなつたため、知事は同公舎第一応接室において予算案の査定事務にとりかかつたところ、右労働組合の組合員である被告人丙、丁を含む組合員数十名は、右の経過をきいて…