被告人の原判示覚せい剤譲り受けの行為については、それぞれ行為時法に従つて法律上の処遇を判断すべきものではあるが、かかる解釈に基き擬律をすると、同被告人の右昭和二九年法律第一七七号の施行前の覚せい剤各譲り受けと同法施行後の常習および営利の覚せい剤譲り受けとは併合罪として重い後者の刑に併合加重をしなければならないことになつて、被告人にとつては却つて不利益に帰するから(昭和二九年(あ)一四〇〇号、同三一年一二月二六日大法廷判決、集一〇巻一二号一七四六頁参照)、所論違法の主張は上告適法の理由とならない。
覚せい剤取締法の一部を改正する昭和二九年法律第一七七号の施行前の覚せい剤譲り受けと施行後の常習および営利の覚せい剤譲り受け行為の適条。
覚せい剤取締法(昭和29年法律177号による改正前のもの)4条1項4号,覚せい剤取締法(昭和29年法律177号による改正後のもの)41条1項4号,覚せい剤取締法(昭和29年法律177号による改正後のもの)41条4項,昭和29年法律177号覚せい剤取締法の一部改正法律附則2項
判旨
新法の施行前後をまたいで行われた犯罪行為について、各行為を個別に判断し併合罪として処理することが、包括一罪として新法を適用する場合よりも被告人に不利益となる場合には、包括一罪として新法を適用した原判決を維持するのが相当である。
問題の所在(論点)
法改正の前後に行われた一連の犯罪行為に対し、常に「行為時法」の原則に基づき各別に擬律すべきか、あるいは被告人の利益を考慮して包括的に新法を適用することが許されるかが問題となる。
規範
犯罪行為が法改正の前後(昭和29年法律第177号による覚せい剤取締法改正等)にわたって行われた場合、原則として各行為時の法律に従って処遇を判断すべきである。しかし、個別の行為ごとに旧法と新法を適用し併合罪(刑法45条)として処断した結果、重い新法の刑に併合加重されることになり、一連の行為を包括的に捉えて新法を適用する場合よりも被告人にとって不利益となる場合には、原判決の擬律を維持することが許容される。
重要事実
被告人Cは、覚せい剤取締法の改正(昭和29年6月12日法律第177号)の施行前後にわたり、覚せい剤の譲り受け行為を繰り返した。原判決は、これらの行為について改正後の覚せい剤取締法を適用して処断したため、弁護人は憲法違反および法の適用誤りを主張して上告した。
あてはめ
本件において被告人Cの行為を厳格に行為時法に基づき分断すると、法改正前の「各譲り受け」と法改正後の「常習および営利の譲り受け」の併合罪となる。この場合、刑法47条により重い方の罪(新法)の刑に併合加重がなされることになる。この結果は、一連の行為を包括的に捉えて新法を適用する場合と比較して、被告人にとって却って不利益な処遇を強いることにつながる。したがって、原判決が改正後の法を適用して処断したことは、実質的に被告人の利益に反するものではなく、違法とはいえない。
結論
被告人にとって不利益となる場合には、厳格な行為時法の適用をせずとも、原判決の擬律を維持することが正当化されるため、上告は棄却される。
実務上の射程
法改正を跨ぐ継続犯や常習犯の処断において、行為時法主義(刑罰不遡及の原則の派生)の例外的な処理を示す。実務上は、併合罪加重による不利益を回避する観点から、包括一罪的な処理が維持される限界事例として参照される。答案上は、罪数論や法の適用に関する論点において、被告人の不利益不利益変更禁止や法の趣旨に遡って論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和49(あ)1757 / 裁判年月日: 昭和49年11月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑において被告人の前科・前歴を考慮することは、直ちに憲法14条(法の下の平等)や39条(二重処罰の禁止)に抵触するものではなく、過度な考慮がなされない限り適法である。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件により起訴され、下級審において有罪判決を受けた際、その量刑において被告人の有する前科および前歴…