しかも、原審挙示の証拠によれば、右Aは、接客婦の雇入を欲して居る際、被告人と通謀し、或はその指示を受けた原審相被告人Bの慫慂を受け、同相被告人が伴つて来た、かねてより接客婦の職を永めている右C或はDに面接し、その結果同相被告人に右両名の雇入をそれぞれ申込み、原判示雇傭関係の成立した事実を認定し得られる。ただ、同相被告人に慫慂せられる以前、右Aが求人の申込をした証拠が必ずしも明確でないのみである。原判決及びその維持する第一審判決は、右雇傭関係成立に至る迄の経緯を「接客婦として雇傭の斡旋をし」と表現しているのであつて、この表現は、これに対する証拠と相俟つて、求人の申込と求職の申込とがあり、この申込をした両者間に介在し、雇傭関係の成立のための便宜をはかつた趣旨を理解するに難くない。
職業安定法にいわゆる職業紹介にあたる事例。
職業安定法5条,職業安定法63条2項
判旨
職業安定法上の「職業紹介」とは、求人及び求職の申込を受け、その申込をした者の間に介在して雇用関係の成立のための便宜を図り、その成立を容易ならしめる行為をいう。
問題の所在(論点)
職業安定法上の「職業紹介」の意義、特に求人者側からの事前の求人申込が明確でない場合であっても、事後的に雇用関係成立の便宜を図る行為がこれに含まれるか。
規範
職業安定法における「職業紹介」とは、求人の申込及び求職の申込の双方を受け、これら申込をした当事者間に第三者が介在して、雇用関係を成立させるための便宜を図り、もって契約成立を容易にする行為を指称する。
重要事実
被告人は、接客婦の職を求めているC及びDを、Aの経営する店に接客婦として雇用されるよう斡旋した。当時、Aは接客婦の雇入れを望んでおり、被告人と通謀した共犯者Bの勧誘を受けてC及びDと面接し、その結果、Bに対して両名の雇入れを申し込んで雇用関係が成立した。被告人側は、Aから事前に正式な求人申込を受けていなかったため「職業紹介」には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
本件では、求人者Aが接客婦を雇い入れたいと考えていた際、被告人の指示を受けた共犯者が、求職者C・Dを伴ってAに面接させている。Aはこの働きかけ(勧誘)を受けて具体的に雇入れを申し込んでおり、結果として雇用関係が成立している。このような経緯における「斡旋」は、実質的に求人・求職双方の申込の間に介在して雇用関係の成立を容易ならしめる行為といえ、形式的に先行する求人申込の証拠が不明確であっても、職業紹介としての実態を具備すると評価される。
結論
被告人の行為は、求人及び求職の申込をした両者の間に介在して雇用関係の成立を容易ならしめるものであり、職業安定法上の職業紹介に該当する。
実務上の射程
職業紹介の定義を明示した基本判例である。答案上は、許可のない職業紹介行為が問題となる事案(職業安定法違反)において、単なる紹介に留まらず、当事者間の合意形成を促進する「便宜供与」が行われているかを認定する際の規範として活用する。また、求人申込が媒介行為の開始より厳密に先行している必要はない点も、実務上の射程として重要である。
事件番号: 昭和32(あ)3270 / 裁判年月日: 昭和36年4月11日 / 結論: 棄却
職業安定法第六三条第二号は、憲法第二二条第一項に違反しない。