判旨
爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、理化学上の爆発現象を惹起する状態に至っている必要はなく、ラムネ瓶に爆発可能な分量のカーバイトを投入した段階でこれに該当する。
問題の所在(論点)
爆発物取締罰則における「爆発物」の意義。特に、装置が未完成であったり、物理的な不備により爆発現象が惹起されなかった場合でも、同罰則の「爆発物」に該当するか。
規範
爆発物取締罰則にいう「爆発物」に該当するか否かは、必ずしも理化学上の意義における爆発物(爆発現象が直ちに惹起される状態)であることを要しない。具体的には、カーバイトを用いたラムネ瓶爆弾の場合、水が注入されておらず球栓が密閉される前の段階であっても、爆発可能な分量のカーバイトが投入されていれば、同罰則の「爆発物」に該当する。
重要事実
被告人が投てきした「ラムネ弾」は、ラムネ瓶内に爆発可能な分量(約17.3g〜20g)のカーバイトが投入されていた。原審は、パッキンの不備により瓶が密閉されず、水の注入により発生したガスが飛散して爆発現象が起きなかったとして、理化学上の意義における爆発物ではないため同罰則の「爆発物」にも該当しないと判断した。これに対し、検察官が上告した。
あてはめ
判例の判断枠組みによれば、カーバイトがラムネ瓶に投入された時点で「爆発物」としての性質を肯定しうる。本件では、瓶内のカーバイト量は爆発しうる分量であった。原審はパッキンの不備により密閉されなかったことを重視したが、そのような理化学上の不備や未完成の状態にかかわらず、爆発の危険性を有する物質が爆弾として構成されている以上、同罰則の適用対象となる。また、パッキンの不備が投てき前から存在したとする原審の事実認定も証拠に基づかない疑いがある。
結論
本件ラムネ弾は爆発物取締罰則にいう「爆発物」に該当し得る。原判決には「爆発物」の解釈適用を誤った違法があるため、破棄・差戻しを免れない。
実務上の射程
爆発物取締罰則の「爆発物」を広範に定義した射程の長い判例である。司法試験においては、未完成の爆弾や不発に終わった物件の該当性が問題となる場面で、理化学的な厳密さよりも「爆発の危険性を有する一体の物件」としての実質を重視する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(あ)2512 / 裁判年月日: 昭和38年1月17日 / 結論: 棄却
本件「ラムネ弾」(判文参照)のように、ラムネ弾のゴムパツキングが不完全であつたため瓶自体の構造上の欠陥により、爆発現象を惹起し得ないものは、爆発物取締罰則にいう爆発物にあたらない。
事件番号: 昭和33(あ)1837 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: その他
普通のラムネ瓶にカーバイト約三一瓦を入れ、これに適量の水を注入して素早く瓶を投擲するという方法で使用されるいわゆるラムネ弾(原判決の判文参照)は、水が注入または手許に準備されていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。
事件番号: 昭和36(あ)1654 / 裁判年月日: 昭和36年5月16日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、爆発現象を惹起し、その作用により治安を妨げ、または人の身体・財産を害するに足りる性能を有するものをいい、極めて高度な破壊力や甚大な被害を与える能力までは必要としない。 第1 事案の概要:被告人が、いわゆる「ラムネ弾」を所持・使用等した行為について爆発物取締罰則違…
事件番号: 昭和33(あ)371 / 裁判年月日: 昭和34年5月7日 / 結論: 棄却
控訴審において弁護人に対する公判期日の通知が適法になされなかつたため、その弁護人が右公判期日に出頭しなかつたとしても、判決宣告期日の通知は適法になされており、弁護人は判決宣告までに弁論再開の申立をする等自ら弁論をする機会を得ることができた筈であるのにそのことなくして経過したばかりでなく、弁護人の控訴趣意書は提出せられて…