普通のラムネ瓶にカーバイト約四〇瓦を入れ、これに適量の水を注入しさえすれば数秒後に爆発するいわゆるラムネ弾(原判決の判文参照)は、いまだそれに水の注入がなくまたその一部に水を保持、流出させる装置がなされていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。
いわゆるラムネ弾が爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたるとされた事例。
爆発物取締罰則1条
判旨
爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態にある物体であって、公共の安全を乱し、または人の身体財産を害するに足りる破壊力を有するものを指す。カーバイト等を用いた「ラムネ弾」についても、その構造や装置、破壊力等に照らし、同罰則の爆発物に該当し得る。
問題の所在(論点)
爆発物取締罰則にいう「爆発物」の定義、およびカーバイトを用いた「ラムネ弾」が同罰則の「爆発物」に該当するか。
規範
爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、①理化学上の爆発現象(物理的爆発または化学的爆発)を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資材が結合せる物体であって、②その爆発作用自体によって公共の安全を乱し、または人の身体財産を害するに足りる破壊力を有するものをいう。なお、その破壊力や危害の可能性については、必ずしも強大または甚大であることを要するものではない。
重要事実
被告人は、カーバイト約40グラムを封入した「ラムネ弾」と呼ばれる物件を所持・使用等したとして、爆発物取締罰則違反で起訴された。このラムネ弾は、水の配合がない状態であったが、弁護人は、火焔瓶を爆発物にあたらないとした先行判例を引用し、本件ラムネ弾も破壊力が不十分であり、かつ不安定な平衡状態にある物体とはいえないため、同罰則の「爆発物」に該当しないと主張して上告した。
あてはめ
本件のラムネ弾は、カーバイト約40グラムを含有しており、その構造、装置、薬品資材の性質および分量、さらには使用方法や性能(特に破壊力)を総合的に考慮すれば、物理的または化学的な急激な体積増大を惹起し得る「不安定な平衡状態」にある物体といえる(①充足)。また、たとえ装置内に水を保持・流出させる設備が直接備わっていなかったとしても、その性能等に鑑みれば、公共の安全を乱し、または人の身体財産を害するに足りる破壊力を有すると認められる(②充足)。
結論
本件ラムネ弾は爆発物取締罰則にいう「爆発物」に該当する。したがって、原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
爆発物取締罰則の「爆発物」の定義を明示した重要判例である。火焔瓶については爆発物該当性を否定した判例(最判昭28.11.13)があるが、本判決は、構造や破壊力の有無によって個別具体的に判断すべきことを示しており、殺傷能力や破壊力が一定程度認められる自作の爆発装置等については、本枠組みを用いて該当性を論じることになる。
事件番号: 昭和36(あ)2512 / 裁判年月日: 昭和38年1月17日 / 結論: 棄却
本件「ラムネ弾」(判文参照)のように、ラムネ弾のゴムパツキングが不完全であつたため瓶自体の構造上の欠陥により、爆発現象を惹起し得ないものは、爆発物取締罰則にいう爆発物にあたらない。
事件番号: 昭和33(あ)1837 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: その他
普通のラムネ瓶にカーバイト約三一瓦を入れ、これに適量の水を注入して素早く瓶を投擲するという方法で使用されるいわゆるラムネ弾(原判決の判文参照)は、水が注入または手許に準備されていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。
事件番号: 昭和36(あ)1654 / 裁判年月日: 昭和36年5月16日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、爆発現象を惹起し、その作用により治安を妨げ、または人の身体・財産を害するに足りる性能を有するものをいい、極めて高度な破壊力や甚大な被害を与える能力までは必要としない。 第1 事案の概要:被告人が、いわゆる「ラムネ弾」を所持・使用等した行為について爆発物取締罰則違…
事件番号: 昭和33(あ)371 / 裁判年月日: 昭和34年5月7日 / 結論: 棄却
控訴審において弁護人に対する公判期日の通知が適法になされなかつたため、その弁護人が右公判期日に出頭しなかつたとしても、判決宣告期日の通知は適法になされており、弁護人は判決宣告までに弁論再開の申立をする等自ら弁論をする機会を得ることができた筈であるのにそのことなくして経過したばかりでなく、弁護人の控訴趣意書は提出せられて…