控訴審において弁護人に対する公判期日の通知が適法になされなかつたため、その弁護人が右公判期日に出頭しなかつたとしても、判決宣告期日の通知は適法になされており、弁護人は判決宣告までに弁論再開の申立をする等自ら弁論をする機会を得ることができた筈であるのにそのことなくして経過したばかりでなく、弁護人の控訴趣意書は提出せられており、これに基き国選弁護人によつて弁論がなされ、且つ検察官の控訴趣意に対しても国選弁護人による答弁がなされているときは、弁護権の行使が不当に妨げられたものとはいえない。
弁護人に対する公判期日の通知が適法になされなかつた違法があつても弁護権を侵害したことにならぬとされた事例。
憲法37条3項,刑訴法273条3項
判旨
爆発物取締罰則上の「爆発物」とは、理化学上の爆発現象を惹起する不安定な平衡状態にある物体であって、その作用により公共の安全を乱し、または人の身体財産を害する破壊力を有するものをいう。ラムネ瓶にカーバイドと水を入れ、ガス圧で瓶を破裂させる「ラムネ弾」は、物理的爆発を伴うため同罰則の「爆発物」に該当する。
問題の所在(論点)
爆発物取締罰則における「爆発物」の意義、および化学反応そのものは爆発的ではない「ラムネ弾」が、物理的な瓶の破裂を伴う場合に同罰則の「爆発物」に該当するか。
規範
爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資材が結合せる物体であって、その爆発作用そのものによって公共の安全を乱し、または人の身体財産を害するに足りる破壊力を有するものを指す。ここでいう「理化学上の爆発現象」には、化学的爆発(急速な化学変化に伴うガス発生と体積増大)のみならず、物理的爆発(物体系の体積が物理的に急激迅速に増大する現象)も含まれる。
重要事実
事件番号: 昭和33(あ)1837 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: その他
普通のラムネ瓶にカーバイト約三一瓦を入れ、これに適量の水を注入して素早く瓶を投擲するという方法で使用されるいわゆるラムネ弾(原判決の判文参照)は、水が注入または手許に準備されていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。
被告人らは、ラムネ瓶におよそ34gのカーバイドを詰め、これに数十gの水を注入して倒立させることで、カーバイドと水の反応によりアセチレンガスを発生させた。瓶内のラムネ玉が口を密閉することでガス圧が急速に高まり、瓶の外壁を破って急激に体積を増大させ、瓶の破片を飛散させる「ラムネ弾」を作成・使用した。この装置は、注水から5秒ないし十数秒で爆発し、飛散した破片等によって周囲に危害を及ぼす危険性を有していた。
あてはめ
本件ラムネ弾におけるアセチレンガスの発生自体は緩やかな化学反応であるが、密閉された瓶内でガスが急速に充満し、その圧力が瓶の耐圧限界を超えて瓶を破裂させる現象は「物理的爆発」に該当する。また、注水によって容易にこの現象を示す状態は「不安定な平衡状態において資材が結合されている物体」といえる。さらに、爆発により瓶の破片が飛散し、公共の安全を乱し、または人の身体財産を害するに足りる破壊力を有していると認められる。
結論
本件ラムネ弾は爆発物取締罰則にいう「爆発物」に該当する。
実務上の射程
爆発物の定義として物理的爆発を含むことを明示した。火薬類取締法等の他法令における「爆発物」概念との異同が問題となる場面や、殺傷能力のある簡易的な危険物の罪責を検討する際の解釈指針となる。答案上は、物の構造(不安定な平衡状態)と作用(破壊力)の二点から規範を定立し、事案の装置がこれに合致するかを検討する。
事件番号: 昭和32(あ)68 / 裁判年月日: 昭和34年7月24日 / 結論: 棄却
一 国家地方警察佐賀県本部警察部隊長〇○の官舎附近に備付の塵箱に「○○に告ぐ、三月貴様は勤労者、農民を仮装敵として演習を行つたが勝つ自信があるか、独立を欲する国民の敵となり身を滅ぼすより民族と己のために即時現職を退陣せよ」と記載したビラ一枚を貼付し、その頃同隊長に右ビラの記載内容を了知せしめたときは、同隊長に対する脅迫…
事件番号: 昭和30(あ)2043 / 裁判年月日: 昭和33年10月14日 / 結論: 棄却
一 本件のラムネ弾(判文参照)は、爆発物取締罰則にいわゆる爆発物にあたる。 二 税務署係員が許可状により現場を捜索して差押えた密造の疑ある焼酎入り甕を運搬して引揚げるため自動車にこれを積載した際、鉈でこれを破砕し流失させる所為は直接右公務員の身体に対するものでなくても刑法九五条一項にいう公務員に対して加えられた暴行と解…
事件番号: 昭和36(あ)1654 / 裁判年月日: 昭和36年5月16日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、爆発現象を惹起し、その作用により治安を妨げ、または人の身体・財産を害するに足りる性能を有するものをいい、極めて高度な破壊力や甚大な被害を与える能力までは必要としない。 第1 事案の概要:被告人が、いわゆる「ラムネ弾」を所持・使用等した行為について爆発物取締罰則違…