一 国家地方警察佐賀県本部警察部隊長〇○の官舎附近に備付の塵箱に「○○に告ぐ、三月貴様は勤労者、農民を仮装敵として演習を行つたが勝つ自信があるか、独立を欲する国民の敵となり身を滅ぼすより民族と己のために即時現職を退陣せよ」と記載したビラ一枚を貼付し、その頃同隊長に右ビラの記載内容を了知せしめたときは、同隊長に対する脅迫罪を構成する。 二 夜間税務署庁内に人糞を投込む目的をもつて同署構内に立入つたときは、たとえ同署裏手に酒販売組合事務所であつて人々が同署通用門を通りその構内を自由に通行していたとしても、その所為は刑法第一三〇条の罪を構成する。 三 本件「ラムネ弾」(原判決判文参照)の如く、その投下地点から僅か一米以内の近距離にあつた警察隊長官舎座敷のガラス窓のガラス一枚さえも破壊しえない程度のものは、爆発物取締罰則にいう爆発物にあたらないものと認める。
一 脅迫罪の成立する事例 二 刑法第一三〇条の罪の成立する事例 三 いわゆる「ラムネ弾」が爆発物取締罰則にいう爆発物にあたらないとされた事例
刑法222条,刑法130条,爆発物取締罰則1条
判旨
爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、爆発作用そのものによって公共の安全を撹乱し、または人の身体・財産を傷害・損壊するに足りる破壊力を有するものを指す。また、庁舎管理者の管理権が及ぶ構内に、夜間人糞を投げ込む目的で立ち入る行為は、正当な理由がなく住居侵入罪を構成する。
問題の所在(論点)
1. 爆発物取締罰則にいう「爆発物」の意義と、破壊力が極めて微弱な物件の該当性。 2. 通行が一部許容されている庁舎構内への、不法な目的(人糞投下)による立ち入りが住居侵入罪(刑法130条)の「侵入」に当たるか。
規範
1. 爆発物取締罰則1条の「爆発物」とは、その投擲による爆発作用そのものによって人心に不安脅威の念を生じさせ、もって公共の安全を撹乱し、人の身体財産を傷害損壊するに足りる破壊力を有するものをいう。 2. 刑法130条前段の「侵入」とは、管理者の意思に反する立ち入りを指す。庁舎管理者の看守下にある構内において、一般に予期される正常な用務を帯びない立ち入りは、管理者の承諾の限度を超えたものとして「侵入」に当たる。
事件番号: 昭和33(あ)371 / 裁判年月日: 昭和34年5月7日 / 結論: 棄却
控訴審において弁護人に対する公判期日の通知が適法になされなかつたため、その弁護人が右公判期日に出頭しなかつたとしても、判決宣告期日の通知は適法になされており、弁護人は判決宣告までに弁論再開の申立をする等自ら弁論をする機会を得ることができた筈であるのにそのことなくして経過したばかりでなく、弁護人の控訴趣意書は提出せられて…
重要事実
被告人らは、夜間に佐賀税務署の庁舎内に人糞を投げ込む目的で、同税務署の構内に立ち入った。さらに被告人らは「ラムネ弾」を投擲したが、その威力は、一個の投下地点からわずか1メートル以内の近距離にあった警察隊長官舎のガラス窓のガラス一枚さえ破壊できない程度のものであった。検察官は、当該立ち入りが住居侵入罪に、当該ラムネ弾の使用が爆発物取締罰則違反に当たるとして起訴した。
あてはめ
1. 本件ラムネ弾は、1メートル以内のガラス一枚さえ破壊しておらず、その性能はかなり弱い。爆発作用によって公共の安全を撹乱し、人の身体財産を傷害損壊するに足りる破壊力を有するものとは認め難いため、爆発物には当たらない。 2. 税務署構内は、用事のない者がみだりに立ち入ることを許さない場所であり、庁舎管理者の看守下にある。たとえ一部通行が自由であっても、夜間に人糞を投げ込む目的で立ち入ることは、正常な用務とはいえず、管理者の承諾の限度を越えた「侵入」と解される。
結論
1. 本件ラムネ弾は「爆発物」に当たらない。 2. 被告人らの行為は住居侵入罪(建造物侵入罪)を構成する。
実務上の射程
爆発物取締罰則の「爆発物」の定義について、破壊力の程度を要件とする限定解釈を示した点に意義がある。また、住居侵入罪における「侵入」の判断につき、管理者の意思(目的による限定)を重視する立場を再確認するものであり、庁舎のような準公的な場所であっても目的の不当性によって侵入が認められることを示す。
事件番号: 昭和30(あ)3198 / 裁判年月日: 昭和34年12月22日 / 結論: 棄却
普通のラムネ瓶にカーバイト約四〇瓦を入れ、これに適量の水を注入しさえすれば数秒後に爆発するいわゆるラムネ弾(原判決の判文参照)は、いまだそれに水の注入がなくまたその一部に水を保持、流出させる装置がなされていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。
事件番号: 昭和36(あ)1654 / 裁判年月日: 昭和36年5月16日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、爆発現象を惹起し、その作用により治安を妨げ、または人の身体・財産を害するに足りる性能を有するものをいい、極めて高度な破壊力や甚大な被害を与える能力までは必要としない。 第1 事案の概要:被告人が、いわゆる「ラムネ弾」を所持・使用等した行為について爆発物取締罰則違…
事件番号: 昭和30(あ)2043 / 裁判年月日: 昭和33年10月14日 / 結論: 棄却
一 本件のラムネ弾(判文参照)は、爆発物取締罰則にいわゆる爆発物にあたる。 二 税務署係員が許可状により現場を捜索して差押えた密造の疑ある焼酎入り甕を運搬して引揚げるため自動車にこれを積載した際、鉈でこれを破砕し流失させる所為は直接右公務員の身体に対するものでなくても刑法九五条一項にいう公務員に対して加えられた暴行と解…