一 本件のラムネ弾(判文参照)は、爆発物取締罰則にいわゆる爆発物にあたる。 二 税務署係員が許可状により現場を捜索して差押えた密造の疑ある焼酎入り甕を運搬して引揚げるため自動車にこれを積載した際、鉈でこれを破砕し流失させる所為は直接右公務員の身体に対するものでなくても刑法九五条一項にいう公務員に対して加えられた暴行と解すべきである。
一 本件ラムネ弾は爆発物取締罰則にいわゆる「爆発物」にあたるか。 二 刑法第九五条第一項にいう暴行と解すべき事例。
爆発物取締罰則1条,刑法95条1項
判旨
爆発物取締罰則上の「爆発物」とは、理化学上の爆発現象を惹起する不安定な平衡状態にある物体で、公共の安全を乱し、または人の身体財産を害するに足りる破壊力を有するものをいい、物理的爆発現象を伴う本件ラムネ弾もこれに該当する。また、差押物を損壊する行為は、公務員の身体に直接加えられずとも、公務員に対する「暴行」に当たる。
問題の所在(論点)
1. ラムネ瓶内でアセチレンガスの圧力上昇により破裂を招く装置が、爆発物取締罰則にいう「爆発物」に該当するか。2. 税務署員が差押え・運搬中の物件(焼酎入りの甕)を損壊する行為が、刑法95条1項にいう公務員に対する「暴行」に該当するか。
規範
1. 爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資材が結合した物体であって、その爆発作用そのものによって公共の安全を乱し、または人の身体財産を害するに足りる破壊力を有するものを指す。2. 公務執行妨害罪(刑法95条1項)の「暴行」は、公務員の身体に直接加えられる場合に限られず、公務員が職務を執行するに当たり、その職務の対象である物に対して加えられる不当な物理力の行使であって、職務の執行を妨害するに足りるものも含まれる。
重要事実
事件番号: 昭和33(あ)371 / 裁判年月日: 昭和34年5月7日 / 結論: 棄却
控訴審において弁護人に対する公判期日の通知が適法になされなかつたため、その弁護人が右公判期日に出頭しなかつたとしても、判決宣告期日の通知は適法になされており、弁護人は判決宣告までに弁論再開の申立をする等自ら弁論をする機会を得ることができた筈であるのにそのことなくして経過したばかりでなく、弁護人の控訴趣意書は提出せられて…
被告人は、税務署員が酒税法違反事件の捜索・差押えに基づき路上に搬出し、一部を自動車に積載した焼酎入りの甕(かめ)を、職務執行妨害の目的で鉈を用いて破砕し、焼酎を流出させた。さらに、写真機を奪い取り、署員の襟首を締め上げる等の暴行・脅迫を加えた。また、被告人は「ラムネ弾」(ラムネ瓶にカーバイトと水を注入し、アセチレンガスの発生・膨張により瓶を破裂させ、ガラス破片を飛散させる装置)を使用した。
あてはめ
1. 本件ラムネ弾は、アセチレンガスの急激な充満による高圧が瓶の耐圧限界を超えて破裂し、多数の破片を広範囲に飛散させるものであり、一種の物理的爆発現象を惹起する。その威力は、5〜10メートルの範囲で人体を傷つけ、至近距離では治療を要する傷を与える破壊力を有するため、公共の安全を乱す「爆発物」といえる。2. 差押えられた密造の疑いがある焼酎入り甕を運搬して引き揚げるため自動車に積載した際、これを鉈で破砕する行為は、直接公務員の身体に向けられたものではないが、職務執行を物理的に妨害する不当な力の行使として「公務員に対して加えられた暴行」と評価される。
結論
1. ラムネ弾は爆発物取締罰則上の爆発物に該当する。2. 差押物件の損壊は、公務執行妨害罪における公務員に対する暴行に該当する。上告棄却。
実務上の射程
爆発物については、化学的爆発に限らず「物理的爆発現象」も含む点、および破壊力の程度が認定の鍵となる。公務執行妨害罪については、物に対する有形力の行使が公務員に対する暴行となり得る(いわゆる間接暴行)ことを示す重要判例であり、職務の対象物件を損壊して職務を困難にする事案に広く射程が及ぶ。
事件番号: 昭和33(あ)1837 / 裁判年月日: 昭和34年6月4日 / 結論: その他
普通のラムネ瓶にカーバイト約三一瓦を入れ、これに適量の水を注入して素早く瓶を投擲するという方法で使用されるいわゆるラムネ弾(原判決の判文参照)は、水が注入または手許に準備されていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。
事件番号: 昭和36(あ)1654 / 裁判年月日: 昭和36年5月16日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、爆発現象を惹起し、その作用により治安を妨げ、または人の身体・財産を害するに足りる性能を有するものをいい、極めて高度な破壊力や甚大な被害を与える能力までは必要としない。 第1 事案の概要:被告人が、いわゆる「ラムネ弾」を所持・使用等した行為について爆発物取締罰則違…