普通のラムネ瓶にカーバイト約三一瓦を入れ、これに適量の水を注入して素早く瓶を投擲するという方法で使用されるいわゆるラムネ弾(原判決の判文参照)は、水が注入または手許に準備されていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。
いわゆるラムネ弾が爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたるとされた事例。
爆発物取締罰則1条
判旨
爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、その破壊力が公共の安全を乱し、または人の身体・財産に甚大な危害を与える可能性のあるものを指し、カーバイドを瓶に詰め水と反応させて爆発させる「ラムネ弾」もこれに該当する。
問題の所在(論点)
ラムネ瓶にカーバイドを詰め、水を加えて爆発させるいわゆる「ラムネ弾」が、爆発物取締罰則にいう「爆発物」に該当するか、また爆発のために必要な水が未注入の状態でも同罪が成立するか。
規範
爆発物取締罰則における「爆発物」とは、火薬・薬品等の化学的分解作用によって急激に生じた瓦斯の膨張力等を利用し、その破壊力が極めて高度であって、公共の安全を乱し、または人の身体・財産を害するに当たり甚大な危害を与える可能性のあるものを指す。また、爆発の準備段階(カーバイドを瓶に入れた状態等)であっても、容易に爆発させ得る状態にあれば足りる。
重要事実
被告人Aは、ラムネ瓶にカーバイドを入れた「ラムネ弾」を所持していた。原審は、当該ラムネ弾について、注入すべき水が未だ注入されておらず、または手元に準備されていない間は「爆発物」に当たらないと判断し、かつ破壊力の程度が高度ではないとして、爆発物取締罰則の適用を否定した。これに対し検察官が上告した事案である。
あてはめ
最高裁は、ラムネ弾について先行する各高等裁判所の判例が「爆発物」に該当すると判断したことを正当と認めた。すなわち、その破壊力が公共の安全を脅かす可能性を有している以上、爆発物としての性質を備えているといえる。また、カーバイドを瓶に入れた状態であれば、水との反応によって容易に爆発を生じさせ得るため、水が未注入であったとしても「爆発物」としての評価を妨げるものではないと解される。
結論
本件ラムネ弾は爆発物取締罰則にいう「爆発物」に該当し、水が未注入の状態であってもその該当性を肯定できる。したがって、原判決は判例に相反する判断をしたものとして破棄を免れない。
実務上の射程
爆発物の定義および「爆発物」の要件が未完成の状態(素材が分離している状態)でも、客観的に爆発の危険性が認められる場合の処罰可能性を示す。司法試験では、爆発物取締罰則の解釈だけでなく、刑法上の危険犯における「危険」の具体化や準備段階の可罰性を論じる際の参考となる。
事件番号: 昭和30(あ)3198 / 裁判年月日: 昭和34年12月22日 / 結論: 棄却
普通のラムネ瓶にカーバイト約四〇瓦を入れ、これに適量の水を注入しさえすれば数秒後に爆発するいわゆるラムネ弾(原判決の判文参照)は、いまだそれに水の注入がなくまたその一部に水を保持、流出させる装置がなされていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。
事件番号: 昭和33(あ)371 / 裁判年月日: 昭和34年5月7日 / 結論: 棄却
控訴審において弁護人に対する公判期日の通知が適法になされなかつたため、その弁護人が右公判期日に出頭しなかつたとしても、判決宣告期日の通知は適法になされており、弁護人は判決宣告までに弁論再開の申立をする等自ら弁論をする機会を得ることができた筈であるのにそのことなくして経過したばかりでなく、弁護人の控訴趣意書は提出せられて…
事件番号: 昭和36(あ)1654 / 裁判年月日: 昭和36年5月16日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、爆発現象を惹起し、その作用により治安を妨げ、または人の身体・財産を害するに足りる性能を有するものをいい、極めて高度な破壊力や甚大な被害を与える能力までは必要としない。 第1 事案の概要:被告人が、いわゆる「ラムネ弾」を所持・使用等した行為について爆発物取締罰則違…