判旨
公職選挙法において、選挙運動者がその運動に対し報酬を受けることを禁止することは、憲法上の財産権を侵害するものではない。また、同法に基づく選挙権・被選挙権の停止は裁判の確定により法律上当然に発生する効果であり、裁判自体によって形成されるものではない。
問題の所在(論点)
公職選挙法において選挙運動者が報酬を受けることを禁止する規定が、憲法29条の保障する財産権を侵害し、違憲といえるか。
規範
公職選挙法が選挙運動者に対する報酬の支払いを禁止する規定は、選挙の公正を確保するための合理的な制約であり、憲法29条が保障する財産権を何ら侵害するものではない。
重要事実
被告人は選挙運動者に対し報酬を支払った等の公職選挙法違反の罪に問われた。これに対し弁護人は、報酬の禁止が財産権の侵害にあたることや、選挙権・被選挙権の停止(同法252条1項)が違憲であることなどを理由に上告した。
あてはめ
公職選挙法が選挙運動への報酬を禁止しているのは、金権選挙を防止し選挙の清廉・公正を確保するためである。このような目的による制約は、個人の財産的利益を一方的に奪うものではなく、選挙制度の根幹を維持するための必要かつ合理的な制限であるといえる。したがって、報酬の受領を禁じることが財産権の本質を損なうものとは解されない。
結論
公職選挙法による選挙運動者への報酬禁止は財産権を侵害せず、合憲である。上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由や財産権に対する制約の合憲性を論じる際の補強材料として利用できる。特に、公職選挙法の規制が選挙の公正という公共の福祉に基づく合理的なものであることを示す判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和28(あ)4123 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
公職選挙法において選挙運動者が其の運動をすることについて報酬を受けることを禁じても、財産権を侵害するものではない。