判旨
裁判官の忌避申立てが訴訟を遅延させる目的のみでされたことが明らかである場合には、当該申立ては不適法として退けられるべきである。
問題の所在(論点)
訴訟遅延を目的とした裁判官の忌避申立てが許されるか。具体的には、忌避原因の有無を判断する前提として、申立て自体の適法性が問題となる。
規範
刑事訴訟法上の忌避の申立て(21条以下)について、それが「訴訟を遅延させる目的のみでされたことが明らかなものである」と認められる場合には、裁判官の公正を害するおそれがあるとはいえず、権利の濫用として不適法とされる。
重要事実
本件において、特別抗告人は裁判長による期日の指定に関する措置に不服があるとして裁判官の忌避を申し立てた。原決定は、当該期日指定の措置は妥当であり、不公平な裁判をするおそれはないと判断した上、本件申立てが訴訟遅延を唯一の目的とするものであると認定した。これに対し、申立人は特別抗告を提起して原決定の不当を主張した。
あてはめ
本件では、期日指定という裁判長の適法な訴訟指揮を理由に忌避が申し立てられている。原決定の認定によれば、当該措置に不公正な裁判を予感させる事情はなく、申立ての主観的意図が専ら訴訟の遅延にあることが客観的状況から明らかである。したがって、このような申立ては忌避制度の本来の趣旨を逸脱した不適法なものと評価される。
結論
本件忌避申立ては訴訟遅延目的が明らかであり不適法である。したがって、これを確認した原決定に違憲等の事由はなく、特別抗告を棄却する。
実務上の射程
忌避制度の濫用に対する「訴訟遅延目的」による却下法理を示す。実務上、弁護人が訴訟引き延ばしのために安易な忌避申立てを行った際の制裁的判断枠組みとして、刑事訴訟法規則25条1項の簡易却下事由の解釈等に影響を与える。
事件番号: 昭和28(し)98 / 裁判年月日: 昭和29年1月16日 / 結論: 棄却
所論は法廷警察権の行使方法が法令に違反するということを前提とし、忌避の理由がある旨主張するに止まり、この点に関する原決定の判断は正当であるから、所論は憲法の各条規に違反するという前提を欠く。註。原決定は法廷警察権の行使に対しても刑訴三〇九条二項の異議を申し立てることができるが、この判断を誤つたからといつて忌避の理由あり…
事件番号: 昭和60(し)14 / 裁判年月日: 昭和60年2月18日 / 結論: 棄却
裁判官が裁判所法二六条二項一号の決定又はこれを取消す決定に関与した事実やその決定の当否は、当該裁判官に対する忌避の理由となし得ない(最高裁昭和四八年(し)第六六号同年一〇月八日第一小法廷決定・刑集二七巻九号一四一五頁参照)。
事件番号: 昭和23(つ)6 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
刑訴法第二九條そのものを所論のように憲法第一五條第二項の精神ないし憲法前文の精神に違反するものと論じ去ることはできない。
事件番号: 昭和27(し)41 / 裁判年月日: 昭和28年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が決定を下すに当たり、憲法に違反する憲法解釈上の誤りや、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反が認められない場合には、特別抗告を棄却すべきである。本件においては、憲法違反を主張する抗告人の主張に理由がないとして、特別抗告を棄却した。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して特別抗告を申し…
事件番号: 昭和59(し)29 / 裁判年月日: 昭和59年3月29日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の言渡取消請求事件につき忌避された裁判官が忌避の申立を簡易却下した場合において、同裁判官が、刑の執行猶予の言渡取消決定をし、これに対する即時抗告につき意見書等を抗告裁判所に送付したときは、右簡易却下の裁判に対する不服申立の利益は失われる。