裁判官が裁判所法二六条二項一号の決定又はこれを取消す決定に関与した事実やその決定の当否は、当該裁判官に対する忌避の理由となし得ない(最高裁昭和四八年(し)第六六号同年一〇月八日第一小法廷決定・刑集二七巻九号一四一五頁参照)。
裁定合議決定又はその取消決定に対する裁判官の関与、決定の当否と忌避の理由
刑訴法21条1項,裁判所法26条2項1号
判旨
裁判官が合議体で審判すべき事件について単独制による決定に関与した事実は、それだけでは直ちに刑事訴訟法21条にいう「不公平な裁判をするおそれ」があるとはいえない。
問題の所在(論点)
裁判官が合議体で審判すべきか否かの判断(裁判所法26条2項1号)に関与した事実が、刑事訴訟法21条1項の忌避事由である「不公平な裁判をするおそれ」に該当するか。
規範
裁判官が裁判所法26条2項1号に基づく「合議体で審判する旨の決定」または「その取消決定」に関与した事実や、その決定の当否それ自体は、直ちに当該裁判官に対する忌避の理由(刑事訴訟法21条1項)を構成しない。
重要事実
本件は、裁判官が裁判所法26条2項1号の合議体による審判の決定、またはその取消決定に関与したことにつき、憲法37条1項(公平な裁判所の裁判を受ける権利)違反や忌避事由に該当することを主張して抗告がなされた事案である。
事件番号: 昭和29(し)6 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避申立てが訴訟を遅延させる目的のみでされたことが明らかである場合には、当該申立ては不適法として退けられるべきである。 第1 事案の概要:本件において、特別抗告人は裁判長による期日の指定に関する措置に不服があるとして裁判官の忌避を申し立てた。原決定は、当該期日指定の措置は妥当であり、不公平…
あてはめ
忌避事由たる「不公平な裁判をするおそれ」とは、裁判官が事件の当事者と関係があったり、事件の予断を有したりする場合を指す。本件において裁判官が関与したのは、単に審判の形態(単独か合議か)を決定する手続上の判断に過ぎない。このような手続的決定への関与やその決定の適否のみでは、具体的事件の内容について裁判官が偏見や予断を持っていると評価するには足りない。したがって、客観的に裁判の公正を疑わせる事情があるとは認められない。
結論
裁判官が審判形態の決定に関与したことは忌避事由に当たらない。したがって、本件抗告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法21条の「不公平な裁判をするおそれ」の判断において、手続的事項(審判の構成等)への関与は原則として排除事由に含まれないことを示す。20条の除斥事由に該当しない限り、過去の同一事件における手続的判断への関与だけでは忌避は認められないという、判例の厳格な態度を補強する材料として答案で使用できる。
事件番号: 昭和53(し)11 / 裁判年月日: 昭和53年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告事件の審理を担当する裁判官が、当該事件に関する準抗告の裁判に裁判長として関与したという事実のみでは、直ちに憲法37条1項にいう「不公平な裁判所」にあたるとはいえない。 第1 事案の概要:被告事件の審理を担当している裁判官が、当該事件に関連して提起された準抗告の裁判に、裁判長裁判官として関与した…
事件番号: 昭和59(し)126 / 裁判年月日: 昭和60年2月8日 / 結論: 棄却
裁判所法二六条二項一号の決定を取り消す決定は、訴訟法に準拠する不服申立の対象とならない。
事件番号: 昭和31(し)23 / 裁判年月日: 昭和31年9月18日 / 結論: 棄却
同一の裁判官が公職選挙法第二二一条違反の罪における金員の被供与者の公判審理により、金員供与者たる被告人に対する事件の内容につき知識を得たからとて、その一事をもつて忌避の理由があるものとすることはできない。
事件番号: 昭和44(し)81 / 裁判年月日: 昭和45年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官に不公平な裁判をするおそれがあるとするには、単に主観的な懸念があるだけでは足りず、客観的な事実に基づき、通常人が不公平な裁判が行われると信じるに足りる状況が必要である。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、正田裁判官について、特定の事実関係(詳細は判決文からは不明)を理由に、同裁判官が不公平…