裁判所法二六条二項一号の決定を取り消す決定は、訴訟法に準拠する不服申立の対象とならない。
裁定合議決定の取消決定に対する不服申立の許否
裁判所法26条2項1号,刑訴法419条,刑訴法420条1項,刑訴法433条1項
判旨
地方裁判所の合議体が、裁判所法26条2項1号に基づく合議審判決を撤回し一人の裁判官により審理及び裁判をさせる旨の決定(除外決定)は、訴訟法上の決定ではないため、当事者が訴訟法に基づく不服申立てを行うことはできない。
問題の所在(論点)
地方裁判所の合議体が行った「合議体で審理する旨の決定」を撤回し「単独制で審理する旨」に変更する決定が、刑事訴訟法上の抗告の対象となる「訴訟法上の決定」に該当するか。
規範
裁判所法26条2項1号の規定に基づき、地方裁判所の合議体が「合議体で審判する」とした当初の決定を変更し、一人の裁判官によって審理及び裁判をさせる旨の決定(単独制への移行決定)は、内部的な司法行政上の性質を有する決定であって、訴訟法上の決定には当たらない。したがって、刑事訴訟法等の訴訟法に準拠した不服申立ての対象とはならない。
重要事実
地方裁判所において、当初は裁判所法26条2項1号に基づき合議体で審理及び裁判をする旨の決定がなされていた事件について、後に当該合議体がこの決定を変更し、一人の裁判官で審理及び裁判をさせる旨の決定(除外決定)を行った。これに対し、当事者が刑事訴訟法に基づき不服を申し立てて抗告したものである。
事件番号: 昭和60(し)14 / 裁判年月日: 昭和60年2月18日 / 結論: 棄却
裁判官が裁判所法二六条二項一号の決定又はこれを取消す決定に関与した事実やその決定の当否は、当該裁判官に対する忌避の理由となし得ない(最高裁昭和四八年(し)第六六号同年一〇月八日第一小法廷決定・刑集二七巻九号一四一五頁参照)。
あてはめ
本件における決定は、裁判所法26条2項1号により認められる裁判所内部の構成に関する判断である。判例によれば、このような変更決定は「訴訟法上の決定ではない」と解される。訴訟法上の決定ではない以上、刑事訴訟法419条や433条等の抗告に関する規定を適用する前提を欠くことになる。したがって、当事者が刑事訴訟法に準拠して不服を申し立てることは法的に許容されないと評価される。
結論
本件抗告は、不服申立ての対象とならない事項に対するものであるため、不適法として棄却される。
実務上の射程
裁判所の構成(単独か合議か)に関する決定は、裁判所の職権に属する内部的判断であり、当事者の不服申立て権が否定されている点に注意が必要である。答案上は、裁判所の構成の違法を理由とする上訴の可否を検討する際、その前提となる中間的な決定に対する即時抗告等の可否を否定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(し)37 / 裁判年月日: 昭和29年10月8日 / 結論: 棄却
検察官から証拠調の請求のあつた供述調書につき、被告人側から異議の申立があつたに拘らず、これを証拠に採用するとした決定の如き訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑訴第四三三条第一項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」にあたらない。
事件番号: 昭和55(し)133 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。 第1 事案の概要:本件において、抗告人は原裁判所が訴訟手続に関して判決前に行った決定に対し、刑事訴訟法433条1項に基づく特別抗告を申し立てた。当該決定が同条項にいう…
事件番号: 昭和29(し)6 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避申立てが訴訟を遅延させる目的のみでされたことが明らかである場合には、当該申立ては不適法として退けられるべきである。 第1 事案の概要:本件において、特別抗告人は裁判長による期日の指定に関する措置に不服があるとして裁判官の忌避を申し立てた。原決定は、当該期日指定の措置は妥当であり、不公平…
事件番号: 昭和47(し)86 / 裁判年月日: 昭和47年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴因変更許可決定のように、訴訟手続に関し判決前にされた決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、同条に基づく特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:検察官による訴因変更の請求がなされ、裁判所がこれを許可する決定(訴因変更許可決定)…