所論は法廷警察権の行使方法が法令に違反するということを前提とし、忌避の理由がある旨主張するに止まり、この点に関する原決定の判断は正当であるから、所論は憲法の各条規に違反するという前提を欠く。註。原決定は法廷警察権の行使に対しても刑訴三〇九条二項の異議を申し立てることができるが、この判断を誤つたからといつて忌避の理由ありといえないとしたもの。
裁判長の訴訟指揮に対する不服を理由とする忌避申立に対する却下決定と特別抗告申立の適否
刑訴法21条,刑訴法309条2項,刑訴法426条,刑訴法433条
判旨
裁判所の訴訟指揮や法廷警察権の行使に対する不満は、それ自体では直ちに裁判官の不公平を基礎付けるものではなく、忌避の理由には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判官による訴訟指揮の適否や法廷警察権の行使の態様が、憲法37条1項の保障する「公平な裁判所」の要請に反し、刑事訴訟法21条の忌避事由に該当するか。
規範
刑事訴訟法21条にいう「不公平な裁判をする虞があるとき」とは、裁判官が事件の当事者等と個人的・関係的な繋りを持つなど、客観的に裁判の公正を期待し難い事情がある場合を指す。裁判所の広範な裁量に属する訴訟指揮や法廷警察権の行使が法令の趣旨に反するとの主張は、それ自体が直ちに不公平な裁判の虞を基礎付けるものではない。
重要事実
本案事件(A事件)の被告人側が、第一審裁判所の訴訟指揮(証拠調べの範囲や順序の決定)および法廷警察権の行使方法が法令に違反しており、公平な裁判所ではないとして裁判官の忌避を申し立てた。これに対し、第一審が忌避申立てを却下し、抗告審もこれを容認したため、特別抗告がなされた事案である。
事件番号: 昭和27(し)41 / 裁判年月日: 昭和28年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が決定を下すに当たり、憲法に違反する憲法解釈上の誤りや、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反が認められない場合には、特別抗告を棄却すべきである。本件においては、憲法違反を主張する抗告人の主張に理由がないとして、特別抗告を棄却した。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して特別抗告を申し…
あてはめ
抗告人は、裁判所の証拠調べの決定等の訴訟指揮が訴訟法の精神に違反し、また法廷警察権の行使が法令に違反すると主張する。しかし、これらはいずれも裁判所の裁量権の行使に関する事項であり、その行使態様が不当であるとの不満を述べるに過ぎない。客観的に裁判官が偏頗な裁判をする蓋然性を示す事情は認められず、憲法上の「公平な裁判所」の原則に反するとはいえない。
結論
本件忌避申立てを却下した原決定に憲法違反はなく、特別抗告を棄却する。
実務上の射程
訴訟指揮等の裁判所の権限行使に対しては、上訴等による是正を求めるべきであり、忌避制度(21条)によって争うことはできないという「忌避制度の限界」を示す。実務上、訴訟指揮の不満を理由とする忌避申立ての排斥に引用される。
事件番号: 昭和29(し)6 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避申立てが訴訟を遅延させる目的のみでされたことが明らかである場合には、当該申立ては不適法として退けられるべきである。 第1 事案の概要:本件において、特別抗告人は裁判長による期日の指定に関する措置に不服があるとして裁判官の忌避を申し立てた。原決定は、当該期日指定の措置は妥当であり、不公平…
事件番号: 昭和31(ク)111 / 裁判年月日: 昭和31年5月18日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、民事事件においては旧民訴法419条の2(現行民訴法336条)に規定する特別抗告の場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人は、裁判官の忌避の原因につき疎明がないとした原審の判断を不服として、最高裁判所に抗告を申し立て…
事件番号: 昭和29(し)64 / 裁判年月日: 昭和29年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人側が申請した証人をすべて喚問することを義務付けるものではなく、証拠調の必要性の判断は裁判所の合理的な裁量に委ねられる。当該証拠が唯一の証拠でない場合など、不必要と認められる証人の尋問を却下することは同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、第一審公判において、…
事件番号: 昭和36(し)21 / 裁判年月日: 昭和36年6月14日 / 結論: 棄却
裁判官が共犯者に対して被告人との共謀にかかる公訴事実につき有罪の判決をしたことだけでは、被告人に対する右公訴事実につき審判をするにあたつて忌避の原因とはならない。