刑の執行猶予の言渡取消請求事件につき忌避された裁判官が忌避の申立を簡易却下した場合において、同裁判官が、刑の執行猶予の言渡取消決定をし、これに対する即時抗告につき意見書等を抗告裁判所に送付したときは、右簡易却下の裁判に対する不服申立の利益は失われる。
忌避申立簡易却下の裁判と不服申立の利益
刑訴法21条,刑訴法24条,刑訴法25条,刑訴法429条1項1号,刑訴法433条
判旨
裁判官に対する忌避申立を却下する決定に対する抗告は、当該裁判官が既に審理を終結させ、本案判決等を行っている場合には、もはや却下決定を取り消す実益を欠き、法律上の利益がないため不適法となる。
問題の所在(論点)
裁判官が自ら忌避申立てを簡易却下(刑事訴訟法24条2項)して本案判決を宣告した場合に、当該却下決定に対する不服申立てに「法律上の利益」が認められるか。
規範
裁判官忌避申立却下の裁判に対する不服申立ては、当該裁判官が審理を継続している限りにおいてこれを取り消す実益がある。しかし、既に本案の審理が終了し、決定や判決が宣告された後においては、当該裁判官を職務から排除する目的を達成できず、不服申立ては法律上の利益を欠き不適法となる。
重要事実
執行猶予取消請求事件の審理中、弁護人が担当裁判官に対し忌避申立てを行った。当該裁判官は「訴訟遅延目的」として自ら忌避申立てを却下し、そのまま審理を継続して執行猶予取消決定を宣告した。弁護人は本案決定に対して即時抗告を行うとともに、忌避申立却下決定に対しても抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和39(し)52 / 裁判年月日: 昭和39年9月29日 / 結論: 棄却
裁判官忌避申立却下の裁判は、当該裁判官が審理を継続している限りにおいては、これを取り消す実益があるけれども、審理を終結し、判決宣告を終つた後においては、右実益が失われるものと解するのが相当である。
あてはめ
本件では、忌避申立てを受けた裁判官が直ちに却下決定を行い、引き続き審理を行って執行猶予取消決定を既に宣告している。忌避制度は不公平な裁判をするおそれのある裁判官を職務から排除することを目的とするが、本案決定が既になされた以上、現在において忌避却下決定を取り消して当該裁判官を排除する実益は失われているといえる。したがって、抗告を維持する法律上の利益は認められない。
結論
本件抗告は、既に本案決定が宣告されたことにより法律上の利益を欠くに至ったため、不適法として棄却される。
実務上の射程
裁判官による簡易却下の当否を争う場合、本案判決前であれば抗告等による是正が可能だが、判決後は「判決に影響を及ぼしたこと」を理由に本案の控訴理由(刑訴法379条)として主張すべきことを示唆している。答案上は、訴訟条件や不服申立ての利益の有無を論じる際の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和49(し)112 / 裁判年月日: 昭和49年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避申立てを却下した裁判に対しては即時抗告が許されないため、当該申立てを準抗告の趣旨と解釈して処理すべきである。 第1 事案の概要:被告人側が裁判官の忌避申立てを行ったが、これが却下された。これに対し、被告人側は「即時抗告」と題する書面をもって不服を申し立てた。原審は、この即時抗告と題され…
事件番号: 昭和29(し)69 / 裁判年月日: 昭和29年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕状を発付した裁判官がその後の審判に関与したとしても、客観的に偏頗の惧れがある等の特段の事情がない限り、裁判の公平を欠くものではない。 第1 事案の概要:本件において、抗告裁判所の裁判官が過去に同一事件の逮捕状を発付していた。抗告人は、当該裁判官が審判に関与することは公平な裁判所による裁判を受け…
事件番号: 昭和49(し)26 / 裁判年月日: 昭和49年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件申立ては、刑事訴訟法433条が規定する特別抗告の要件を満たさないため、不適法として棄却されるべきである。 第1 事案の概要:本件は、申立人が下級審の決定等に対して不服を申し立てた事案である。しかし、提出された判決文からは、具体的な事件名、下級審の判断内容、および申立人が主張した具体的な不服理由…
事件番号: 昭和27(し)41 / 裁判年月日: 昭和28年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が決定を下すに当たり、憲法に違反する憲法解釈上の誤りや、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反が認められない場合には、特別抗告を棄却すべきである。本件においては、憲法違反を主張する抗告人の主張に理由がないとして、特別抗告を棄却した。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して特別抗告を申し…