判旨
最高裁判所への特別抗告において、抗告理由を単に抽象的に述べるにとどまり、具体的理由を明示しない申立ては、刑事訴訟法405条所定の事由があるとはいえず不適法である。
問題の所在(論点)
特別抗告の申立理由として、具体的な事由を明示せず、抽象的に「刑事訴訟法405条の事由がある」と記載するだけで、同法に基づく適法な申立てといえるか。
規範
最高裁判所への特別抗告(刑事訴訟法433条1項)が適法と認められるためには、原決定に同法405条各号に規定する事由(憲法違反、憲法解釈の誤り、または最高裁判所若しくは上級裁判所の判例との相反)があることを具体的かつ明確に主張しなければならない。単に抽象的に同条の事由がある旨を述べるだけでは、不適法な申立てとなる。
重要事実
申立人は、原決定に対して最高裁判所に特別抗告を申し立てた。その際、申立書において「刑訴法405条に規定する理由があると考える」と記載するにとどまり、具体的な憲法違反の箇所や、相反する判例の指摘などの詳細な理由を一切明示していなかった。
あてはめ
申立人の主張は、単に「刑訴法405条に規定する理由がある」という極めて抽象的な表現に終始している。これは、同条が要求する具体的な上告事由(憲法違反や判例相反)を特定し、原決定のどの部分が不当であるかを論理的に示すものとはいえない。したがって、具体的理由の明示を欠く本件申立ては、適式な不服申立てとしての要件を満たしていないと評価される。
結論
本件特別抗告は具体的理由を欠く不適法なものであるため、棄却を免れない。
実務上の射程
特別抗告や上告の適法性を判断する入口論として重要である。実務上、抽象的な主張のみでは不適法却下(棄却)の対象となるため、答案上でも上告事由等の「具体的な主張」の有無が適法性の要件であることを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和32(し)49 / 裁判年月日: 昭和32年10月23日 / 結論: 棄却
再審請求人が裁判所の求意見に対し現実に意見書を提出した場合のみならず、裁判所が再審を請求した者に対し意見を求め、且つその意見の申述につき相当期間をおいたにも拘らず、請求人から遂に意見を申述しなかつた場合も、刑訴規則二八六条にいう意見を聴いた場合に該る。
事件番号: 昭和29(し)20 / 裁判年月日: 昭和29年6月15日 / 結論: 棄却
有罪を言渡した確定判決に対する再審の請求を棄却した地裁の決定に対する即時抗告について、高裁が右再審請求の事由とするところは不適法であるとして、右即時抗告を棄却した決定に対しては、右確定判決に憲法違反があることを理由として最高裁判所に特別抗告を申し立てることはできない。
事件番号: 昭和28(し)74 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対しては、法律により特に許された場合を除き、直接抗告を申し立てることはできない。また、特別抗告として申し立てる場合であっても、その理由が再審事由等の法定された事由に該当しない限り不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、旧刑事訴訟法510条に基づき、最高裁判所に対して即時抗告を申し立…
事件番号: 昭和29(し)51 / 裁判年月日: 昭和29年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所がなした再審請求棄却の決定に対し、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てを経ることなく直接特別抗告を申し立てることは、同法433条により許されない。 第1 事案の概要:抗告人は、強盗致死被告事件の確定判決(福岡高等裁判所)に対し再審請求を行った。これに対し、福岡高等裁判所が再審請求を…
事件番号: 昭和57(し)119 / 裁判年月日: 昭和57年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として憲法違反や判例違反が主張されていても、実質が単なる法令違反の主張にすぎない場合には、刑事訴訟法433条の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原判断に判例違反および憲法違反があるとして特別抗告を申し立てた。しかし、その主張の内容を精査したところ、原判断は引用され…