判旨
憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。未決勾留日数の本刑算入が少ないとしても、直ちに同条に違反するものではない。
問題の所在(論点)
未決勾留日数の本刑への算入が一部にとどまり、未算入の勾留日数が残るような判決が、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする、人道上残酷と認められる刑罰を指称する。未決勾留日数の本刑算入割合が、被告人の主張する比率との間で権衡を欠くように見えたとしても、そのことのみをもって同条にいう残虐な刑罰に該当すると言うことはできない。
重要事実
被告人は懲役10月の判決を受けたが、第一審で33日、第二審で44日、合計77日の未決勾留を受けていた。これに対し、原判決では第一審分から20日、第二審分から30日の合計50日を本刑に通算した。被告人側は、本刑10月に対して未算入の拘禁日数が残る比率は権衡を失しており、憲法36条の「残虐な刑罰」に該当すると主張して上告した。
あてはめ
憲法36条の「残虐な刑罰」の定義に照らせば、未決勾留の本刑算入が所論のように少なかったとしても、それが直ちに不必要な苦痛を強いる人道上残酷な刑罰にあたるとは認められない。本件では、総勾留日数77日のうち50日が本刑に通算されており、通算されない残余の未決勾留日数は27日に過ぎない。この程度の未算入は、刑罰の本質を人道上残酷なものに変質させるものではないといえる。
結論
未決勾留の一部が算入されないとしても、憲法36条の残虐な刑罰には該当せず、上告は理由がない。
実務上の射程
憲法36条の「残虐な刑罰」の解釈に関するリーディングケース(死刑判決等でも引用される定義)である。刑法21条に基づく未決勾留の算入が裁判所の裁量に委ねられていることの憲法上の限界を示す文脈で活用できる。
事件番号: 昭和59(あ)27 / 裁判年月日: 昭和59年3月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留日数は、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。未決勾留日数の算入が許される限度は、他罪の刑の執行が終了した日の翌日から判決言渡の前日までの期間に限られる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪等で第一審・第二審を通じて勾留されていたが、その勾留期間中に、別罪(住…