判旨
裁判所には被告人側の申請した証人を全て取り調べる義務はなく、裁判所がその必要を認めて尋問を許可した証人に限って取り調べれば足りる。
問題の所在(論点)
裁判所は、被告人側が申請した証拠(証人)のすべてを取り調べる義務を負うか。裁判所の証拠採否の自由と、憲法上の適正手続・証人尋問権の関係が問題となる。
規範
裁判所は、当事者が申請した証拠のすべてを取り調べる義務を負うものではない。裁判所が証拠調べの必要性を判断し、尋問を許可した証人に限って取り調べを行うことで足り、それにより憲法が保障する被告人の権利が不当に制限されるものではない。
重要事実
被告人側が複数の証人を申請したが、裁判所はそのすべての尋問を行わなかった。これに対し弁護人は、被告人側の申請にかかる証人をすべて取り調べないことは憲法に違反するとして上告した。
あてはめ
本件において、裁判所は被告人側から申請された証人のうち、裁判所が必要と認めたものについてのみ尋問を許可した。裁判所が必要性を認めた証人のみに取り調べを限定することは、訴訟経済や審理の効率性の観点からも許容される合理的な裁量権の範囲内であるといえる。
結論
裁判所にすべての申請証人を取り調べる義務はない。したがって、必要性を認めた証人のみに限定して取り調べを行った原審の判断に憲法違反はなく、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法298条に基づく証拠調べ請求に対し、裁判所が同法299条等の趣旨に鑑み、証拠決定(採否)の裁量権を有することを裏付ける判例。公判前整理手続等においても、立証趣旨との関連性や必要性を厳格に判断する実務の基礎となる。答案上は、被告人の証拠申請を却下した場合の適法性を論じる際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和29(あ)1750 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審裁判所は証人申請の取捨選択について合理的な裁量権を有しており、必要性がないと判断される証人尋問を行わないことは違法ではない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が第一審において証人の呼出し・尋問を申請したが、裁判所がこれを却下した。弁護人は、この証拠調べの却下が訴訟手続の違法であるとして上告を…