刑訴四四条一項にいう「裁判の理由」とは、主文のよつて生ずる理由を指すのであつて証拠上の理由のごときはこれに含まれないと解すべきであるから、有罪判決においては、所論のように、何故にある証拠を採用し他の証拠を排斥したかの理由、あるいは採用した証拠により如何なる理由を犯罪事実を認定したかの判別について必ずしも一々これを判示することを要するものではない。
刑訴法第四四条第一項にいう「裁判の理由」の意義
刑訴法44条1項
判旨
憲法37条2項は、被告人側が申請した証人を裁判所の必要性判断にかかわらず全て喚問すべき義務を課すものではなく、証拠採用の可否は裁判所の健全な裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
被告人側が申請した証人を裁判所が却下することが憲法37条2項(証人尋問権)に違反しないか。また、有罪判決において証拠の取捨選択の理由を詳細に説示する必要があるか(刑事訴訟法上の「裁判の理由」の範囲)。
規範
憲法37条2項は、被告人または弁護人が申請する証人を、裁判所が必要と認めない場合であっても全て喚問し、尋問の機会を与えなければならないという趣旨ではない。証拠の取捨選択は裁判所の健全な合理性に基づく自由裁量に委ねられており、その範囲を逸脱しない限り適法である。
重要事実
被告人A、B、Cらは、各々の弁護人を通じて証人申請を行ったが、原審(控訴審)においてこれらの証人申請が全て却下された。弁護人は、このような証人申請の却下や、証拠の採用・排斥に関する理由が判決文に明示されていないことが、憲法37条(公平な裁判所の裁判、証人喚問権)や刑事訴訟法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
憲法37条2項の証人喚問権について、裁判所は本件第一審以来の審理経過に照らし、原審における証人申請全部却下の措置が「健全な合理性」に反するとはいえず、自由裁量の範囲を逸脱したものではないと判断した。また、刑事訴訟法上の「裁判の理由」とは主文を導き出す直接の理由を指し、証拠の取捨選択の過程や理由(どの証拠を採用し、どの証拠を排斥したか)までを逐一判示することを要しないと解される。
結論
被告人側の証人申請を却下した原審の措置は、裁判所の合理的な裁量の範囲内であり、憲法37条2項に違反しない。また、証拠排斥の理由不備も違法ではないため、上告を棄却する。
実務上の射程
被告人の証人喚問権を具体化する刑事訴訟法298条1項の証拠調べ請求に対し、裁判所が決定(同法190条等)をもってこれを却下できる裁量的権限を憲法上肯定したものである。答案上は、証拠請求の却下が「裁量権の逸脱・濫用」にあたるか否かの検討において、本判例を根拠に裁判所の広範な裁量を前提としつつ、審理の経過等の「健全な合理性」を検討する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)2762 / 裁判年月日: 昭和31年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は合理性を欠かない限り自由裁量によって証拠の取捨選択が可能であり、憲法37条2項後段は裁判所が必要と認めて召喚した証人についてのみ適用される。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が控訴審(原審)において書証および証人の証拠調べを請求したが、裁判所はこれらを却下した。弁護人は、この却下決定が憲法…